西武・浅村は、なぜ打点王になれたのか? ライオンズの4番の「思い切り振る力」

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打席で結果を残せるようになったのは、意識が変わったからだけではない。2012年まではほぼすべてのボールに対してフルスイングしていたが、13年はコンパクトに打ち返す場面も増えた。2つの打ち方を使い分けられるようになったのは、新たな技術を身に付けたからだ。

「今年は右方向に強い打球を打てるようになっているので、思い切りスイングしなくていいときもあります。ボールも飛ぶようになったし、シーズンオフから春季キャンプまで、そこに取り組んできましたからね。右を狙うのは、打率を残すためです」

この上なく貪欲な23歳

右方向への打撃において、「ケガの功名」と言うべき出来事もあった。6月21日のオリックス戦で強振した際、左肩を負傷したことだ。患部への負担を減らすため、左肩を開かないように意識すると、右方向へのヒットが増えた。このアクシデントが打撃に好影響を及ぼしたと、安部理前打撃コーチは話している。

「浅村が今年いちばんよくなったのは、右方向にしっかり打てるようになったことだね。追い込まれても強引なスイングではなく、センターから右を意識していることが、結果につながっている。左肩の脱臼があってから、強引に振りにいっていない分、しっかりボールを見極められている。頭が動くと反対方向には打てない。軸がしっかりして、目線がブレないようになった」

プロ入り1年目からフルスイングを貫き、実戦を重ねながらさまざまな技術を修得した。そうして打点王のタイトルを獲得した浅村は、来季、さらなる高みを見据えている。

「来年は3冠? そういう目標を持っていきたい」

「来年は打点も打率も本塁打も、3部門とも目標がある」(ともに12月4日付『スポーツ報知』より)。

プロ入り6年目のシーズンを迎えるにあたり、このオフは土台づくりに取り組んでいる。

「バッティングをするうえで、もっと体の力がほしい。体幹、腹筋、背筋、下半身の強化をしたいと思います」

もっとスケールを大きくしたい? そう聞くと、間髪入れずに言った。

「はい。まだ、全然、足りないです」

超一流を目指す23歳は、この上なく貪欲だ。

中島 大輔 スポーツライター

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なかじま だいすけ / Daisuke Nakajima

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。2005年夏、セルティックに移籍した中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に野球界の根深い構造問題を描いた「野球消滅」。「中南米野球はなぜ強いのか」(亜紀書房)で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。NewsPicksのスポーツ記事を担当。文春野球で西武の監督代行を務める。

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