超一流選手になりたい――。
2008年、ドラフト3位で大阪桐蔭高校から埼玉西武ライオンズに入団した浅村栄斗は、スケールの大きな目標を持ってバットを振り続けてきた。プロ入り5年目の2013年、王貞治、松井秀喜らに並ぶ史上最年少で打点王を獲得。23歳の右打者は、着実に自身の理想像に近づいている。
では、浅村の描く超一流とはどんな選手だろうか?
「ライオンズには松井稼頭央さん(現楽天)や中島裕之さん(現オークランド・アスレチックス)など、“顔”と言われる選手がいました。自分もそういう選手になりたいと、プロに入る前から思っていましたね。そういった人たちに追いつき、みんなに『ライオンズと言えば浅村』と思ってもらえるような選手になりたい」
2012年オフ、浅村は決意をグッと高める出来事があった。公私ともに仲がよく、「あこがれ」と公言してきた中島が翌年からメジャーリーグに移籍することが決定し、あるOBの家へ食事に連れて行かれたのだ。
「僕の後は浅村をよろしくお願いします」
中島がそう頼んだのは、2002年から西武を2年間率いた伊原春樹。図らずも2014年から西武の監督に復帰したOBと食事を共にし、浅村は「必死にやらなければ」と感じたという。
思い切り振れる理由
そうして迎えた今季、浅村はキャリア最高の成績を残した。初めて144試合に出場し、打率はリーグ5位の3割1分7厘、本塁打は4位の27本、打点はトップの110。5月29日のDeNA戦から4番を任され、主砲としてチームを牽引した。
「技術的に1年間でめちゃめちゃ変わったという部分はありません」
自身を謙遜する浅村だが、野球評論家は彼のすごみについて、「思い切り振れること」と口をそろえる。「思い切り振る」のは簡単なことのように聞こえるが、プロのレベルになるとそうではない。評論家時代、伊原監督がこんな話をしていた。
「バッティングでいちばん大事なのは、タイミングを取れるかどうか。うまくタイミングを取れる選手もいれば、ある打席では足を上げてみたら次は引いてみたり、毎回、試行錯誤しているバッターもいる。浅村がフルスイングしてバットにボールを当てられるのは、タイミングが合っているから。どんなにマッチョな体でも、タイミングを取れなければフルスイングはできません。浅村は天性の才能を持っています」
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