ドル円相場は、緩やかに1ドル105円めざす 日本経済研究センターの愛宕氏に聞く

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12月6日、日本経済研究センターの愛宕伸康・短期経済予測主査は、日米金融政策の方向性の違いによりドル/円は緩やかに105円を目指すと話した。都内で2月撮影(2013年 ロイター/Shohei Miyano)

[東京 6日 ロイター] -日本経済研究センターの愛宕伸康・短期経済予測主査は6日、ロイターとの取材の中で、日米金融政策の方向性の違いにより、ドル/円は緩やかに105円を目指すと話した。

120円以上の円安は産業界も望んでおらずコスト上昇要因と指摘する一方、過去1年間のアベノミクス相場では、円安による株高で消費が回復したと指摘。緩やかな円安基調が望ましいとの見解を示した。

愛宕氏は景気・物価の先行きをみる前提として、米連邦準備理事会(FRB)による資産買入れ縮小が2014年1-3月に始まると想定している。

2000年代も「米国が04年6月に利上げを開始、約2年後の06年3月に日銀の量的緩和が終了。この間、円安が進んだ」と指摘。「今回も緩和縮小開始が見えている米国と、緩和が継続する日本との間で、金融の緩和度における差が拡大。緩やかな円安が進む」とみる。

もっとも「ドル/円の均衡為替レートは90円台後半」と試算しており、現状はすでに円高是正と言うよりも円安との認識だ。経済界は「海外生産がかなり進んだ下で、120-130円といった水準までの円安は望んでいない」と述べ、「過度な円安は、エネルギー価格上昇や国内中小企業のコスト上昇につながる」とも指摘した。

昨年11月以降のアベノミクスによる景気回復は「円高修正による企業収益の改善だけでなく、株価上昇によって消費が回復したことが大きい」とみる。

愛宕氏の率いる短期経済予測チームは、日本経済研究センターがまとめるエコノミスト約40人が成長率予測を競う「ESPフォーキャスト調査」で的中率トップ5に入った。

同チームは現時点で2014年度の実質成長率を前年比プラス0.6%、15年度同プラス1・1%、消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI、消費税の影響除く)は14年度プラス0.6%、15年度プラス0.7%とみる。

物価の見通しは日銀(15年度コアCPI1.9%)と比べて大幅に低く、民間エコノミストの集計値「ESPフォーキャスト調査」(15年度コアCPI、0.96%)と比べても慎重だ。

見通しにかい離ができている要因の1つに来年4月の消費増税がある。「企業の設備投資は不確実性で抑制される。消費増税の景気への影響が、現在の最大の不確実性」と指摘する。

円安も「通常は輸入コストを押し上げるが、シェールガス革命で原油先物価格に先安感が出ている」として物価の上昇ピッチを抑える可能性を指摘している。

基本給などの所定内賃金で前年割れが続いている。デフレ脱却にはこの点の改善が課題の1つだが、「2014年度は前年比0.5%のプラスに浮上する」とみている。

(竹本能文 編集:田巻一彦)

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