ユニーク採用の雄、サイバーAはここまでやる キャンプファイヤーでその人の「何」を見るか

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何日も来社したり、宿泊したりして、じっくりワークショップを行うプログラムが多いのも特徴だ。現場の社員が何日もつきっきりで、インターンシップ生に時間を割いている。それだけ密に接すれば、能力や人間性を測れ、学生も会社のことを良く知ることができるだろう。

プログラムを通して「リアルがわかる」という声が多いという  (写真:サイバーエージェント)

しかし、ここまで濃密にプログラムを行うと、現場の社員から「負担が大きい」と悲鳴があがることが多い。サイバーエージェントで成り立っているのは、会社側がインターンシップに関わる社員の負担を軽減するよう、バックアップしていることも大きい。

土日に出社した場合の代休の取得は当然として、現場の仕事が忙しい場合、インターンシップにはアサイン(担当割り当て)させないといった配慮を行っているという。特定の社員に負担が片寄らないよう、かなり気を遣っているという。こういう措置がとれるのも、会社ぐるみのプロジェクトという前提があるからだろう。

また、「デザイナー社員に作品を見てもらう会」や「最新技術の勉強会」など、さまざまなプログラムやイベントを用意して、学生が社員と接する機会を設けている。中には、社内の複数のインターンシッププログラムに参加する、という学生もいるという。

「リアルが分かる」と学生から評価

こうした取り組みによって、学生の要望には応えられている、と石田氏は言う。

「学生さんからの質問で多いのは、『リアルを知りたい』という声。『労働環境について、ホームページではこう書かれているけど、実際はどうか』『さまざまな賞を受賞しているスター社員だけでなく、普通の人ともお会いしたい』など、全部見てから入りたい学生さんが多い。そうした要望に対して、私たちは何も隠さず、実際に働いてみて隅々まで見てください、というスタンスで取り組んでいる。その点は評価されていると思います」

さらにインターンシップでは、「学生を学生扱いしないで、いっしょに働く一人の仲間として接する」ように心がけているという。お客様扱いせず“仲間”として認めることで、学生もその「会社のメンバー」になっているという意識が芽生える。そこから同社に対する愛着も生まれる要因にもなっている。

最近の学生の傾向として「この人といっしょに働きたい」という、”人の存在“が、就職する会社を選ぶ決め手になっている。実際、サイバーエージェントでも、「〇〇さんといっしょに働きたいから選んだ」という学生がかなり増えているという。

現場の社員がしっかり採用に関わり、学生と接することで、会社も本当にほしい人が採用できるし、就活する学生も納得して入社できる。売り手市場を考えれば、サイバーエージェントのような「社員全員が採用担当」の仕組みは、他の会社でも広がっていきそうだ。

杉山 直隆 オフィス解体新書・代表

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すぎやま なおたか / Naotaka Sugiyama

1975年生まれ。専修大学法学部卒業後、カデナクリエイト入社。ビジネス誌やビジネス書、企業の社内報・PR誌の執筆・編集を主に手がける。2016年に独立(屋号:オフィス解体新書)。社会人インターンシップ情報を紹介するブログメディア「30歳からのインターンシップ」を立ち上げ、取材活動をしている。共著に『課長・部長のための労務管理 問題解決の基本』『図解&事例で学ぶ入社1年目の教科書』『クイズ商売脳の鍛え方』など。

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