安倍政権を年明けも悩ます片山・桜田エラー 参院選へ向けた「時限爆弾」にも

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2012年暮れの第2次安倍政権発足以来、組閣・改造人事のたびに「問題閣僚」の追及で国会が混乱し、事態打開のための辞任・更迭劇が繰り返されてきた。とくに、2014年秋の臨時国会では、同年9月発足の第2次安倍改造内閣の人事で首相が抜擢した小渕優子経済産業相と松島みどり法相が、政治資金スキャンダルなどで就任から1カ月半余で辞任に追い込まれた経緯もある。このため、今回も永田町では「片山、桜田両氏も臨時国会中の辞任は避けられない」(閣僚経験者)との見方が少なくなかった。

しかし、臨時国会終盤の与野党攻防は、「事実上の移民法」とされる入管難民法が最大の対決案件となり、「片山・桜田劇場は観客の飽きもあって、優先順位が落ちた」(立憲民主幹部)のが実態だ。しかも、会期末直前までもつれ込んだ入管難民法をめぐる攻防も、有力紙のコラムで「お定まりの“激突ショー”」と揶揄されたように、「野党側にも本気度が欠けていた」(自民長老)ことで、片山・桜田問題の決着は年明け以降に持ち越しとなった。

ただ、片山氏の隠れ蓑となってきた名誉棄損訴訟は12月3日の第1回口頭弁論で文春側が争う姿勢を示し、年明けからの審理で「黒白がつけられる」(関係者)ことになった。片山氏側の泣き所とされる「音声データ」ついて、片山氏は「自分の声かどうか判断できない」などと同氏と大蔵省(現財務省)同期入省で、今春にセクハラ問題で辞任した福田淳一前財務事務次官の真似のような答弁をした。だが、今後の審理に絡んで声紋鑑定などで真偽が明らかになる可能性が大きい。

来年1月中旬から続開となる名誉棄損訴訟の審理の過程で、片山氏が国会で否定した「疑惑」が「事実」と認定されれば、一気に進退問題に発展することは避けられない。このため、首相にとっても、片山氏が「政権運営の時限爆弾」(自民長老)であることに変わりはないわけだ。

参院選に向け、政権へのボディ―ブローにも

一方、桜田氏についても「まともに答弁できない」ことへの国民の不信感は根強いとされる。同氏の過去の「暴言・失言・迷言」もメディアの好餌となっており、与党内でも「通常国会での予算委審議は長丁場なので、官僚が作った答弁メモの棒読みだけでは乗り切れるはずがない」(自民国対)との指摘もある。

しかも、年明けには2020年東京五輪・パラリンピックの準備も大詰めを迎えるだけに、担当閣僚の桜田氏が国会対応に追われれば、「オールジャパンで進める準備作業の障害になる」(東京都幹部)ことも避けられない。

こうしてみると、「野党の腰砕けと、閣僚としての追及慣れもあって、臨時国会はなんとか逃げ切れた」(自民国対)とされる片山、桜田両氏だが、現状では来年の通常国会でも改めて野党の標的となり、国会混乱の火種となる可能性は否定できない。

首相周辺では「2人のお騒がせ大臣のおかげで、首相の泣き所の“もり・かけ疑惑”はほとんど追及されずに済んだ」(周辺)とほくそ笑む向きもあるが、与党内には「通常国会でもこんな状況が続けば、参院選に向けて安倍政権のボディブローになる」(自民幹部)との不安は隠せない。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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