地方から相次ぐカジノ誘致のラブコール 観光への波及期待

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地方のインフラ利用すれば、安いコストで開設可能

カジノを大都市から離れた規模の小さい街に建設するのは、ヨーロッパの経営モデルだ。ドイツの温泉都市・バーデンバーデンにもカジノがあり、これは熱海市や徳島県鳴門市のお手本になる。

実際にカジノ・オーストリアやグランドカジノ ルツェルンは日本進出に関心を持っている。また、実際に進出するとすればいずれも日本でビジネスパートナーとの提携を考えており、大規模な施設を新たに作るのではなく、すでにあるインフラを活用することになりそうだ。

「すでにある建物にカジノを作ることで、その建物をよみがえらせることができるものもある」とグラン・カジノ・ルツェルングループのCEO ウォルフガング・ブリーム氏は語る。カジノ事業は地域との融合が必要であると唱えるひとりだ。

確かに大規模な施設を始めから作るには多額の資金が必要になる。シンガポールのマリナベイサンズの建設費用は60億ドル。マカオに昨年開業したサンズコタイセントラルの建設費は50億ドルだ。ラスベガスの帝王として知られるスティーブ・ウイン氏はマカオに建設予定の豪華リゾートに40億ドルをつぎ込むことを見込んでいると言う。

佐世保誘致なら、ハウステンボスがコア施設に

地方都市でも大規模な統合型リゾートの誘致を提案しているところがある。人気観光地、ハウステンボスがある長崎県佐世保市だ。ここにカジノやエンタテテインメント施設、ホテルなどを含めた複合リゾート施設を建設しようというのである。

ハウステンボスは17世紀のオランダの街並みを再現したテーマパーク。第三セクターによって1990年代の資産バブル全盛時に建設されたが、大きな負債を背負って経営破たん。その後、野村ホールディングス野村ホールディングス<8604.T>の傘下で経営再建に取り組んだが、2010年に格安旅行代理店のエイチ・アイ・エス<9603.T>に譲渡された。

今や九州を代表する観光地となったハウステンボスは、すでにエンターテーメント施設やホテル、レストランなどがそろっている。土地の買収からIRの建設をするより、低いコストで複合施設を完成させることができることを強みとして、市や商工会議所が一枚岩となり誘致をアピールしている。統合型リゾート建設に向けて活動する西九州統合型リゾート研究会には、長崎県の中村法道知事も特別顧問として参画している。

「東京に作るのはよくないと思っている」とエイチ・アイ・エス会長の澤田秀雄氏。「(カジノを地方都市に作ることで)地方も元気になって、東京も元気になるというのがいい。東京一極集中はよくない」と、誘致に力を入れている。

(ネイサン・レイン、藤田淳子 編集:田巻一彦)

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