「キャプ翼」の葛飾にJクラブを作る夢と現実 南葛SCの関東2部昇格に向けた挑戦は来季へ

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カベッサは練習に対する姿勢や周囲への気遣いなども厚い勤勉な選手である。Jリーグから東京都リーグへカテゴリーも下がり、練習日も少なくなったなか、前向きにやれているモチベーションの源を尋ねた。

11月3日の試合でのカベッサ選手(右から1人目)(筆者撮影)

「Jリーグで結果を出せなかったので、まだ日本でプレーしたい気持ちがありました。

チームメイトが僕を100%信頼してくれるので、僕もその信頼に応えられるように100%出すことを意識していますし、今年ここに来たのはチームを昇格させるためなので、それがモチベーションになっています。

社会人リーグの特徴として、みんな仕事をしてから時間を作って練習に来ています。そこですごくいいプレーをしていることが僕にとっては刺激になるし、モチベーションになっています」

話を3日の与野蹴魂会戦に戻そう。

先発出場した福西は後半15分に交代した。

派手なプレーはなかったものの声を出してチームのバランスを図っていた。冷静に考えれば、ワールドカップに2大会出場した選手が、このピッチにいることはものすごいことだ。一緒にプレーしているチームメイトはなおさらだろう。

試合中の福西崇史選手(筆者撮影)

福西さんからガチで学んでくれ

「福西さんの契約を発表した時にどよめきはありました。GMとして全員と1対1で個人面談もしていますが、そこで意図なども説明して、こんなレベルの人とガチでやれることはないので、そこも含めて学んでくれと伝えました」(岩本義弘GM)

全員と個人面談をしているという話に驚いた。そんなにもGMが選手とコミュニケーションを取っているケースはほとんどないからだ。

「みんな働いているので、個人面談の調整が大変で20人以上、それぞれの会社の近くや家の近くに行き面談をしています。チームのこと、仕事のこと、今後のことなどを約1時間、人によっては2時間前後、話します」

忙しいなか、なぜそんなにもコミュニケーションを取ることに時間を充てているのだろうか。

インタビューに応じた南葛SCの岩本義弘GM(筆者撮影)

「フロントと現場(監督・コーチ・選手)の距離が遠いクラブはうまくいっていないのを、20年以上、指導者や選手・チーム関係者に取材してきて知りました。

さらに、トップのマネジメントの人たちにも話を聞く機会が多かったので、海外のサッカーも含めて、どういうものがいいのかは知識としてはあります。

指導者経験はないのでテクニックは教えられないですが、マネジメントに関してはある程度の知識と自信があるので高橋陽一先生もGMのオファーをしてくれたんだと思います」

岩本氏はGM業で給料をもらっているわけではなく、むしろ持ち出しも多いとのことだ。高橋先生が本気でJリーグを目指している情熱を感じて、一緒にやっていく覚悟をしたという。

後半にカベッサが得点を挙げて2-0で与野蹴魂会を破り、翌11月4日に行われる2回戦に進んだ南葛SC。前半に与野蹴魂会に訪れたビッグチャンスを決められていたら試合はどちらに転んでいたかわからない、そんな試合であった。

次ページしかし、翌日の試合で…
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