韓国・現代自動車に見えた勝ち残りへの課題 業績不振に株価急落、ささやかれる危機論

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自動走行車技術は同じグループ会社の現代モービスを中心に開発中だが、これを効率的に生産・供給・拡散・運営する役割を担当するということだ。AIリサーチラボを総括するのは、最近入社した元ネイバーラブスインテリジェンスグループで取締役だったキム・ジョンヒ氏(45)だ。

現在、自動走行車に関する技術はウーバーやグーグルなどアメリカの情報通信技術(ICT)企業が先行しており、ゼネラルモーターズ(GM)やフォード、トヨタ自動車など完成車メーカーが後を追っている。現代自動車もこの流れに本格的に参入することになる。

鄭氏は今年9月、インドで開催された「ムーブ(MOVE)グローバルモビリティサミット」で、「スマートモビリティソリューションを提供する企業へ転換する」と明らかにした。GMなどはすでに2015年から自動走行車の開発を始め、アメリカでは来年から無人タクシーを導入する状況だ。そのため、現代自動車の参入には「いまさら」感がある。しかし、グローバルモビリティアライアンスが明らかに形成されようとしている中で、現代自動車もこの動きに参入し、体制を転換すべきと判断したようだ。

水素自動車の開発に勝負をかける

また、研究開発本部の下に「燃料電池事業部」を新設した。水素自動車の技術開発を行う部署だ。同技術の高度化と新産業創出などを推進する。事業部長にはキム・セフン常務・燃料電池開発室長が就いた。キム常務はこれまで、同社の水素自動車開発をリードしてきた人物だ。世界の自動車市場が今後、内燃機関から電池、さらに水素へ再編されると見られる中、水素自動車の競争力をさらに強化するということだ。

水素自動車事業は、文在寅大統領がパリで10月14日に同社の水素自動車に試乗した後、さらに弾みをつけそうだ。10月30日、韓国・京畿(キョンギ)道にある同社研究所で開催された行事で、水素自動車が輩出した水を再活用したり、状況に合わせて自動車のシートを出し入れしたりするなど、モビリティに適合した技術が大挙して紹介されていた。

合わせて、鄭氏は「デザイン経営」もさらに強化すると同時に、変化も模索している。同社のルーク・ドンカーボルケ現代デザインセンター長(副社長)を現代自動車グループのデザイン最高責任者(CDO)に任命した。鄭氏が起亜自動車社長だった2005年に、三顧の礼をもって招聘したペーター・シュライヤー現代自動車グループデザイン経営担当社長が今年9月まで担当していた職責だ。

ドンカーボルケ副社長は、プジョー、フォルクスワーゲングループなどで活躍したデザイナーで、2016年から現代自動車と「ジェネシス」ブランドのデザイン開発をリードしてきた。今後、同グループ全体における次世代のデザイン戦略を立案していく。

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