日本人は、なぜ外国人の「隣」に座らないのか それは人種差別というほどでもないが

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数週間前、私はまた自分の隣にスペースを感じながら電車に乗っていた。またも私の隣は空だったのだ。小さな地下鉄の車内は満席だったのに。

電車で移動するとき、おそらく2回に1回は空席現象が起きると言ってもいい。その日の気分によって、この状態がひどく気になるときもあれば、あまり気にならないこともあり、この日はほとんど気にしないでいたのだが、人生とは感情の変化を繰り返すものなのだろう。自由が丘駅からある母娘が乗ってきた。

母親が私の隣の席を娘に促すと…

電車が駅に到着し、大勢の乗客が電車を降りると同時に次々と乗客が乗り込むとき、なるべく視線をそらしている。それは、いかにも座りたい素振りの乗客が私の隣に空席を見つけて向かってきたのに、私の姿を見てあからさまに方向を変えてほかの座席を探しながら離れていくのを見るのが嫌だからだ。だからいつも目を閉じて、頭を下げるなどしている。

そのときもそうだった。そして再び目を開けたとき、私の前に2つの小さな足が立っていることに気がついた。それがたった今乗ってきた、母親と一緒の幼い娘の足だと気づいたと同じタイミングで驚くことが起きた。その母親は、満員の車内で避けられていた私の隣の空席に座るよう娘に指示を出したのだ。

しかし私よりももっと驚いたのは、まだ4〜5歳と思われるその娘のほうだ。はっきりと「怖い!」と言い放ち、目には恐怖の色を浮べ、母親の足に素早くしがみながら私をじっと見つめるのだった。

実はこうした子どもの反応は想定内で、私が驚いたのは、娘がこうなるともわからずに私の隣を促した母親に対してだった。このような母親に出会ったのは、日本生活15年の中でも2、3度あるかないかだ。私がこのときどれほど驚いたかといえば、思わず、どうか娘への罰ゲームやお仕置きとして私を利用したのではないことを祈ったほどだ。

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