東京も地方も「24時間型社会」はやめるべきだ 「未来の年表」著者・河合雅司氏に聞く<前編>

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中原:私が大企業のトップの方々と話をするたびにいつも実感しているのが、東京圏の大企業に勤める女性のなかでも、出産の中核となる20~39歳の女性の結婚率が恐ろしく低いということです。企業によっては50%を割り込むところも珍しくはない。大企業に勤める女性が東京圏全体の結婚率、ひいては出生率を大幅に引き下げているという事実もわかってきました。

おそらく、東京圏の中小企業に勤める女性の結婚率も、大企業ほど低くはないにしても、地方の企業を大幅に下回る結婚率であるというのは容易に想像できます。企業の規模にかかわらず、サービス業を中心に長時間労働が常態化していて、たとえ結婚しても子どもを産み育てる費用を考えると、いまより生活が豊かになる見込みが薄いからです。

「24時間型社会」はもう維持できない

河合:東京一極集中モデルはこれまでは成功だったと言えるでしょう。貿易立国を国是に掲げて全国から有能な人材を東京に集め、そこでは企画や研究といった生産性の高い仕事を行う。一方、地方は部品生産など任せるという分業モデルは有効に機能してきました。大阪や名古屋など企業の多くも、本社機能を東京に移す合理性があったわけです。

ところが、過去のモデルが通用する時代ではなくなったにもかかわらず、今でも大阪や名古屋圏から東京圏へと多くの若者が流入しています。大雑把にとらえるならば、大阪や名古屋は近郊からの人口流入や外国人によって何とか人口規模を維持しているのです。

この点、うまくやっているのは福岡です。福岡から東京への流出もあるわけですが、福岡は九州全土から若者、特に若い女性をのみ込んでいます。福岡はかつて東京から離れていることが不利な材料と言われてきましたが、いまではその距離の壁が逆にアドバンテージとなっているのです。もちろん、行政もそれをサポートするような施策を多く実行しています。

人口減少社会では、地方の中核都市ですら人手不足が深刻になります。それに対応するためには「24時間型社会」を見直すなど、これまでの生活モデル、社会モデルを大きく変えることが急務です。企業も無駄な長時間労働を見直すなど、働き方を変えることで生産性を高めることが大切になってくるのは言うまでもありません。

中原:働き方を変えたり生産性を高めたりするという話でいえば、テレワークの重要性が増してくると思います。総務省の2016度の調査によれば、テレワークを導入する企業の生産性は、導入していない企業の1.6倍にもなるという結果が出ていますね。

2016年の段階では調査対象が少ないことから、生産性における効果をそのまま鵜呑みにするのは控えたいですが、それでも感覚的には生産性が少なくとも2~3割は容易に上がるということは理解できます。なぜかというと、大都市圏では毎日の通勤が「痛勤」といえるほど肉体的および時間的な負担が大きいので、その負担を消せるだけでも効果が大きいはずだからです。

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