ノーベル賞で脚光、「小野薬品」の期待と現実 「オプジーボ」拡大に喜んでばかりいられない

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ノーベル賞を受賞した本庶佑・京都大学特別教授。2015年の東洋経済のインタビューでは、基礎研究の重要性を強調していた(撮影:尾形文繁)

膨大な開発費は、中堅の小野薬品には大きなリスクとなる。開発にゴーを出すには、リスクを軽減するためのパートナーの確保が不可欠だった。その後、メダリックスは2009年にアメリカの製薬大手ブリストルマイヤーズ・スクイーブ(BMS)が買収。小野薬品は結果的に、強力な開発パートナーを得ることになった。

こうした紆余曲折を経て、オプジーボが世に出たのが2014年。PD-1の発見から22年の歳月が経っていた。

小野薬品の収益は急拡大

上市後、小野薬品の収益は大きく飛躍した。2015年3月期から2017年3月期までに売上高は1357億円から2448億円に、営業利益は147億円から722億円に急拡大した。

最初に皮膚がんの1つである悪性黒色腫(メラノーマ)の治療薬として承認され、100ミリグラム瓶1本の価格が約73万円だった。当初は高額薬価の批判が強く、2017年2月に50%、さらに2018年4月には約24%もの大幅な価格の引き下げに見舞われた(今年11月も引き下げの予定)。

それでも同薬が小野薬品の最大の牽引役であることに変わりはない。適用のがん種が増えているからだ。現在ではメラノーマ、腎がん、頭頸部がん、胃がん、肺がんなど7種類のがんや、療法も含めると9つの適用で承認済み。医者から処方される患者数、使用量が急拡大し、強烈な単価下落を補っている。

オプジーボの売り上げは2019年3月期に900億円に上る見通し。それとは別にBMSによるオプジーボの海外販売額に応じたロイヤルティ収入があり、その額は推計で500億~550億円に上る。

未承認の肝がん、食道がん、大腸がんなどへの適応拡大に向けての国内治験も、30件前後が進行中。国内での販売拡大はまだ続きそうだ。

それでも今の小野薬品には、オプジーボがもたらす栄華に酔いしれる暇はない。なぜか。第1にはオプジーボが切り開いた成長市場、がん免疫治療薬の間の競争が激化していることだ。

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