「計画運休」、鉄道各社の判断なぜ分かれた? 大きな混乱はなかったが…翌日の対応に課題

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実際に西武各線は、池袋駅を22時24分に出る池袋線保谷行きの電車をもって全線の運転を終えた。23時以降は風雨も強まり、線路やホームなどに落下物もあったものの、運休後の時間だったため影響はなかったという。「利用状況や台風の予報をもとに決めた運休時間だったが、結果的によい判断だった」と同社。今後も台風などの際に計画運休を行うかどうかについては「今回の事例を振り返って考えていきたい」という。

都心に乗り入れる首都圏大手私鉄各線では、このほか小田急電鉄が18時に、京王電鉄が19時45分に22時以降の運休を発表。小田急は23時13分、京王は23時32分で全列車の運転を終えた。

時間を予告しての運休について小田急は「記録がある限り台風では初だと思う」。22時以降の運休を判断した理由については「通常の終電時間帯にかけて暴風が予想され、運転見合わせに至ると考えられたので、安全性と運休による混乱を防ぐため」と説明する。

東急電鉄は他社よりやや遅く、21時30分に終電時間の繰り上げを発表した。「相互直通路線が多く、他社との調整もあったため」(広報部)という。台風での終電繰り上げは「おそらく過去にはこういった事例はないのでは」。結果的に東急線は比較的遅い時間まで走り続け、東横線の武蔵小杉駅23時53分着が最終列車となった。

「運転継続」した各社の判断は?

一方、運転を継続したのが東武鉄道、京急電鉄、京成電鉄だ。特急など一部列車の運休はあったものの、この3社は基本的に終電まで運行を継続した。

21時以降に運休の可能性があることを告知した上で運行を続けた京急は「雨や風の数値を見て、規定に入っているかで運行の継続を判断している」といい、予測も含めて基準値には至らなかったため運休しなかったという。東武と京成は、安全上問題ない限りは運行を継続するという考えだ。

だが、運行を継続したある鉄道の関係者は「各社の状況を見つつ(計画運休の)検討する必要もあるかもしれないとは思う」と話す。

各社によって判断は異なるものの、今回の台風24号では計画運休が多数派となった首都圏の鉄道。関東地方のある鉄道関係者は「24時間前に運休を判断できるかどうかと言われると難しいが、急な運休による混乱防止や安全面を考えれば今後もありうるだろう」といい、首都圏でも広がる可能性は高そうだ。

ただ、9月30日の夜は特に大きな混乱もなかったものの、10月1日朝の通勤時間帯には各線で暴風による障害物などの影響で運休やダイヤの乱れが多発した。利用者にはおおむね受け入れられたとみられる計画運休だが、今後は翌日の線路点検や被害への対応を含めた運休計画の策定も重要な課題となるだろう。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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