東京は高給女と低収入男の「未婚アリ地獄」だ 「年収700万超未婚者」の過半が1都3県に住む

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低収入ソロ男と高収入ソロ女がマッチングされない件については、この連載でもたびたび話題にしてきました。そもそも、高年収女性の未婚率が高い要因のひとつは、女性の上方婚志向があります。自分より年収の高いハイスペックな男性を求めがちです。しかし、そうそう高年収男性がたくさんいるわけではありません。結局、高年収女性ほど対象者が減り、結果未婚化に陥るという話です。「高収入のソロ女が専業主夫として低収入ソロ男を養えばいい」というコメントをいただいたことも多々あります。

しかし、現実はそう簡単にマッチングされません。自ら稼いで、経済的に自立しているソロ女の特徴として、考え方が男性的規範に縛られてしまいがちです(「『結婚しない女』の行動は限りなく男性的だ」)。だから、「男性とはこうあるべし」という思考に陥り、「男性は強くあるべし。デートではもちろん必ず女性におごるという気概を見せるべき」という声が多いというお話もかつてしました(「デートで『おごられたい』女性は実は少数派だ)。

そうした彼女たち自身の価値観だけが要因ではありません。そうした「男が養うべき」規範に支配されているのは、むしろ男性のほうが多く、彼ら自身が自分より稼ぐ女性を拒否しがちだからでもあります。

居住エリア別に見ると…

さらには、居住エリアごとの偏りもすさまじいものがあります。年収別の男女未婚者数の構成比を見てみると、圧倒的に東京圏(東京・神奈川・埼玉・千葉の一都三県)に集中していることがわかります。特に、年収700万円以上の未婚者は、男女とも50%以上が一都三県の居住者です。

注目すべきは女性のほうです。全国総数の有業者人口構成比と比較すると、男女とも高年収者は一都三県に集中していますし、男性の場合、総数と未婚者で差分が変わるのは900万円以上と限定されています。しかし、女性の場合は、200万円以上のほぼ全区分で未婚者が上回り、特に、1000万~1500万円の高年収未婚女性に至っては8割が一都三県在住の女性で占められます。つまり、高年収の生涯未婚女性というのはそのほとんどが東京圏で働く女性だと結論付けても問題ないでしょう。一方で、生涯未婚率の高い多くの低年収男性は、都市に偏ることなく、全国的に分散し生息していると言えます。

くしくもこれは、江戸時代と酷似しています。当時、働き場を求めて、江戸には農村からたくさんの未婚男性が流入しました。そのため、江戸は一時女性の2倍も男性が多く住む「男余りの町」でした(「独身が5割超、江戸男子に学ぶシングルライフ」)。必然的に、性比のアンバランスにより有配偶率が減少、それとともに全体の出生率も低下し、結果都市の人口減少を起こしています。

周辺農村からの人口を引き付け、生涯未婚のまま死んでいく人たちが多かった状態を、歴史人口学者の速水融氏は「都市の蟻地獄」と名付けています。江戸時代、その蟻地獄にはまったのは男性のみでしたが、現代では、それが女性にも波及しています。

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