「R32GT-R」が今なお200万円以上で売れる理由 伝説のクルマはいかにして生み出されたか

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もう1つ、R32スカイラインが小型かつ丸みを持った外観となる背景にあったのが、4世代目のケンメリスカイラインを最後に途絶えていたGT‐Rの復活である。

スカイラインは、富士精密工業の時代から航空技術者たちの技術に対する思いから生まれた一台であり、2代目のスカイラインがレースでの勝利を目指し、もともと1500ccの直列4気筒エンジン用に開発された車体前部を伸ばして2000ccの直列6気筒エンジンを搭載したスカイラインGTを開発することにより、ポルシェ904と鈴鹿サーキットで競った話は有名だ。

2000GTの後継ともいえるのが、3世代目スカイラインのGT‐Rである。2代目に比べ、やはりここでも車体が大柄になって上級志向となったハコスカスカイラインが、レースで勝つために生み出されたクルマである。R380という、これもプリンス時代に開発が始められたレーシングカーに搭載されていた直列6気筒DOHCエンジンの設計者が、同じ構想でGT‐R専用に設計したエンジンを搭載してハコスカGT‐Rは誕生した。そしてレース参戦以来、52勝という記録を打ち立てた。

その後、4世代目スカイラインにもGT‐Rは存在したが、ケンメリスカイラインと愛唱された4代目のGT‐Rはレースに出場することなく、197台という少量生産で打ち切られた。

グループAによるレースで勝利するために

そこから16年の歳月を経て、R32スカイラインでGT‐Rが復活することになったのである。

「R32GT-R」の上級グレード「V-spec」のリアスタイル。レトロだが今なお魅力のあるスタイリングだ(写真:日産自動車ニュースルーム)

復活の理由は、当時のツーリングカー選手権の世界規定として制定されていたグループAによるレースで勝利するためであった。必勝を期して、GT‐Rはよみがえったのである。

世界的なレース規則の中で勝利するという、明快な目標のため、R32スカイラインはGT‐Rの基準車両として小型化され、また丸みを帯びた外観を作り上げたのである。そのため、上昇志向を満たす見栄えのよさや、ゴルフバッグを4個積むためのトランク容量はまったく無視された。

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