デカく重く「車の恐竜化」は止められないのか 今やカローラやシビックさえ3ナンバー車だ

拡大
縮小
太いタイヤを履かせるにはボディの横幅を広げる必要がある(写真:BMW)

かつては「3ナンバー車」は貴重で高級車の代名詞でもあった。それが今では、多くの車が3ナンバーになっている。かつての大衆車ブランドであるトヨタ・カローラも新型「カローラスポーツ」は3ナンバー車として登場した。昨年、7年ぶりの日本復活を遂げたホンダ「シビック」も今や3ナンバー車だ。現行シビックの横幅は1800mmにも達している。

車幅の拡大は、室内幅を広くするのはもちろん、操縦安定性を改善して高性能化に備えるのにも欠かせない。クルマの背の高さが同じなら、幅が広いほど左右のタイヤが満遍なく接地してコーナリング時のグリップ力を稼げるからだ。

いまどきの高価格車はセダンでも400馬力や500馬力を備えるハイパワーマシンが珍しくなくなっていて、そのパワーを受け止めるタイヤもまたスーパーカー並みに太くなっている。太いタイヤはそれ自体の重量も大きいうえ、大きなロードノイズを発するので、静粛性を確保しようとすれば遮音材の追加、つまり重量増が避けられない。

さまざまな機能を統合したナビゲーションシステムや、マッサージや温度調整もできる電動調整式シート、いまやあらゆるところに納まるSRSエアバッグ、マルチスピーカーの高音質オーディオ、自動運転支援のためのセンサー類や制御コンピュータなどなど、重量増を招く贅沢装備の充実はとどまるところを知らない。

これらの装備同士を結ぶハーネス(電線)も、ハイエンドの高級車では1台あたりの総延長がなんと10kmを超えるそうで、その重さも数十kgに及ぶ。そういうわけで、20年前なら車重1500kgを超える乗用車は限られた車種だけだったが、今どきはいわゆるコンパクトカーに属さない中型車クラス以上なら、ほとんどの車種がその水準を上回っている。

「重さ」の見えないデメリット

数十kmまでの移動は充電で、ロングランは燃料を使って走るプラグイン・ハイブリッド車は、本格的な電気自動車時代到来までの架け橋として期待されている。バッテリー容量に余裕があるのでモーターを有効に使え、普通のハイブリッド車以上にスイスイ走って気持ちいいが、同じサイズのボディとエンジンを持つクルマに比べれば大幅に重いことにどれほど多くの人が気づいているだろうか。

たとえば、ある高級車ブランドのプラグイン・ハイブリッド車の重量は1980kgで、同じ2リッターエンジンを持つ一般のガソリン車より280kgも重い。同様に、電気自動車は同等の積載性やスペース効率を備えたガソリン車より2割以上重くなるという。

「燃費が良ければべつに重くてもよいではないか」と思うかもしれないが、衝突安全のことも考えるとそうとは言い切れない。アメリカで自動車の衝突安全試験を幅広く実施する公的機関IIHS(米国道路安全保険協会)の実験によると、壁にぶつかる単独の試験では良好な結果を残した小型車でも、より大きく重いクルマとのクラッシュでは、深刻なダメージを受けるリスクが間違いなく高いのだ。

つまり世の中に新しく送り出される新車の安全性がどんどん高まっていく傍らで、古くて軽いクルマの安全性は相対的に低下していく。

次ページ「いいものを長く」使おうという方向に推移
関連記事
トピックボードAD
自動車最前線の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT