江ノ電の混雑対策、「沿線住民優先」は正解か 鎌倉市の「社会実験」に利用者が下した評価

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では具体的にどんな策が考えられるか。江ノ電として今後何ができるかを見ていこう。

社会実験当日の長谷駅の待ち時間表示=2018年5月4日(筆者撮影)

前回の記事でも述べたように、輸送力増強には、現在の4両編成を6両に増やすなど編成の長大化、および運行本数増が手っ取り早い。

だがそのためには、鎌倉―藤沢間の信号場を含むすべての駅(極楽寺駅を除く)で駅ホームや線路を長くしたり、すれ違い駅の数を倍に増やしたりしなければならない。土地の入手が必要で、資金面や駅周辺に家が建て込んでいる現状からすると容易にできることではない。鉄道事業は許認可事業なので、江ノ電だけで決められないことも多い。

「GW中は1980年代から鎌倉駅などで30分や1時間の乗車待ち行列ができていました。その対策を検討してきましたが、本数増や増結などの抜本的な解決には越えるべきハードルが多すぎて難しいのが現状です」(江ノ電鉄道部旅客課)。

「2階建て車両」の実現性は?

前述した2階建て車両にする案はどうだろうか。車窓の眺めがよくなってぜひ乗りたい。

「そのアイデアを伺ってまず思ったのが、乗降に時間がかかってしまうことです。混雑のピーク時期はどうしても遅延が発生してしまうのですが、この原因は乗降に時間がかかったためがほとんどです」(同社)。確かに各階からの下車客が車両ドア手前で合流したり階段を上り下りしたりするので、時間がかかる。

特に混雑するのが鎌倉―長谷間である。その対策として記事には「鎌倉駅から長谷の大仏方面へのバス利用を推奨」(NONAME)とのコメントが寄せられ、支持24、反対3と支持率が高い。

これについては「GW中の一部の日では、バスへの振替輸送をしているのですが、由比ガ浜通りはまだしも、鎌倉駅付近で渋滞が起きているので、それが問題です」(同社)。

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