金の「安全資産」としての価値は消えたのか? 金利が上がるならGOLDを持っていても損?

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一方、金は需要面にも不安を抱えている。二大消費国のインドと中国の通貨に対してドルが堅調さを維持していることがその背景にある。今年第1四半期の宝飾品需要は前年同期比で小幅な減少だったが、その中身を見ると、通貨の影響が大きかったことがわかる。インドの宝飾品需要は、自国通貨であるルピーの対ドルでの下落による、ルピー建て金価格が上昇したことで抑制された。これに対し、中国は自国通貨の人民元が対ドルで上昇したことで、需要は拡大していた。その結果、両国の需要動向が相殺される形で、結果的に第1四半期の宝飾品需要は小幅な減少にとどまっていた。

しかし、第2四半期に入ると、ルピーの下落がさらに顕著になった一方で、人民元も下落に転じており、需要が減退した可能性が指摘されている。ドル建て金相場は下げているものの、通貨安の影響が相対的に大きいことがその背景にあるとみられる。この傾向はいま現在も続いており、7月以降も宝飾品需要は減少している可能性が指摘されている。トランプ大統領は「ドル高はアメリカ経済に悪影響を及ぼす」と発言し、ドル高基調を牽制しているものの、ドルはそれほど下げていない。これも金価格の重石になるといえる。

当面、アメリカの利上げは金に不利か

さらに金価格に重くのしかかっているのが、将来的な金利上昇圧力である。多くの市場関係者は、米国の金利が今後上昇していくとみている。一方、金には利子がつかないため、今後金利が上がっていくと考えるなら、「金を保有しておく理由はない」との結論になる。

現在、アメリカの景気は堅調であり、今後も利上げが継続される可能性が高いことも、金離れに拍車をかけるかもしれない。7月27日に発表された今年4~6月期の米実質GDP速報値は年率換算で前期比4.1%増と堅調だった。

減税効果を背景に個人消費が盛り上がり、2014年7~9月期の4.9%増以来の大きな伸びを記録し、景気の底堅さを改めて裏付けた格好だ。2009年7月に始まった米国景気の拡大は、戦後最長となる10年間の更新も射程内に入っており、今後は米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを継続する可能性が高いと考えられる。

6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)終了時点では、年内あと2回の利上げを予想するFRB関係者がもっとも多かった。実際、市場では9月と12月のFOMCで0.25%ポイントずつの利上げが実施されると予想しており、金利上昇圧力はますます強まり、金には不利な状況がさらに強まることになるかもしれない。

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