豪雨被災地「アレルギー患者」が直面する危機 命にも関わることだが後回しにされている

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特に三原市西部の本郷地区は被害が激しく、ひまわり保育所を含む一画は工場やショッピングセンター、そして病院までもが1階の天井近くまで浸水。氾濫したのは夕方以降だったので保育所に子どもたちはいなかったが、遊び道具や乳母車などほとんどのものが泥水にのみ込まれた。もしこれが日中に子どもがいる時間だったら……と思うとぞっとする。

乳母車も乾いた泥に覆われていた(筆者撮影)

「再開は1カ月後、2カ月後という話ではないでしょう。まったく先が見通せません……」。まだボランティアも入っておらず、1人で泥出しや備品の運び出しをしていた市子育て支援課の職員は、額に汗をしたたらせて声を絞り出した。

市内のほかの保育所や子ども園は、ほぼ通常どおり再開したが、ひまわり保育所は子どもたちを他の施設に振り分ける代替保育を当面続けることになる。入所していた親子たちにとっては、直接の被災に加えてのつらい現実だ。

時間が経つほどに追い詰められる被災者はほかにもいる。本記事では「アレルギー」を持つ親子たちが直面している危機についてリポートしたい。

母親たちの焦燥

3連休初日の7月14日、山陽新幹線三原駅前のビルの1室に、若い母親たちが焦燥した様子で集まっていた。

アレルギー対応食を仕分ける「三原アレルギーの会ひだまり」の母親たち(筆者撮影)

取り囲んでいたのは卵や乳、小麦などの成分を除去したアレルギー対応食。魚の缶詰からレトルトのご飯とおかず、離乳食やミルクもある。

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