退職金をもらう時「絶対やってはダメなこと」 銀行から電話が来たら、どうすればよい?

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もし本当に顧客が投資信託での運用を希望しているのなら非課税口座である一般NISAやつみたてNISA(NISA:少額投資非課税制度)を比較検討材料として案内すべきです。特につみたてNISAならすべての投資信託の購入手数料はアクティブファンドも含め0%ですから、この説明をしないのは不親切です。また投資タイミングを「分散」するというテクニックも知らせるべきでしょう。

「外貨建ての年金保険はオトク」とは言えない

また「外貨建ての年金保険」を勧められるケースもとても多いです。筆者のところへ相談に来たお客様は「元本保証だから」と1000万円を一括払いしていました。「日本円で運用するより高金利だから」と言われ、さらに「投資信託だとリスクがあるので、おっかないですよね。その点保険なら」と言われたとか。

おっかないの意味が違っています。日常生活でのリスクは主に「危険」のことであり確かに「おっかない」です。しかしおカネの世界で使うリスクは不確実性という意味です。プラスにもマイナスにも変動するのが「予測できない」と言うのであればまだしも、「おっかない」で片づけてしまうのは問題です。

実際、銀行員から「高金利」と言われたその保険も10年後の満期時の返戻率が115%でした。元本よりも大きくなって戻ってくるのだから「ありがたい」のだという理屈です。しかしこの数字は「10年間に15%、つまり年平均利回り1.5%」を意味します。

本当に10年で確実に15%増えるのならまだわかります。この外貨建て保険の場合、保険料を一括で支払う際に8%も手数料を払います。そのおカネは払ったおカネから引かれ、運用に回らないのです。また満期時は確かに元本保証ですが、それも「外貨(米ドル)建て」です。いわば「ゼロクーポン債」を購入するのと、仕組みとしては同じようなものです。

比較のために証券会社で販売している「外貨建て既発債」のリストを見てみると、たとえばアメリカ国債のゼロクーポン債では「購入単価が額面100に対し80、残存約10年で利回りは2.6%」というものがありました。どちらが良いのか、比較してみても良いのではないでしょうか?

「死亡時の保障がついているから良いのでは」と思うかもしれませんが、本当に死亡保障が欲しいのなら普通の死亡保険にすべきです。1000万円払って死亡時に1000万円が戻ってきても、それは「死亡保険」ではありません。死亡保険と言えるのは、払った保険料よりも多く保険金を受け取るために使う仕組みです。

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