米中貿易戦争が日本に「飛び火」するリスク トランプが自動車にイチャモンをつけたら?

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トランプ大統領のこの一連の「思いつき」行動については、藤原帰一先生(東京大学政策ビジョン研究センター長)のすばらしい分析(『週刊東洋経済4月7日号』のインタビュー)がありますので、これはぜひご覧になったほうがよろしいかと存じます。

トランプ大統領の信頼とは、自分の言うことを聞くの意

藤原先生は基本的にトランプがやることは「思いつき」以外の何物でもなく、思いつきで行動する人がアメリカ大統領であるという危険性に(日本人は)早く気がつくべきだ、と指摘されています。この点については私も「激しく同意」、でありまして「共和党のことだから、レーガン大統領のときにそうだったように、プロの政治家たちがちゃんとコントロールするだろう」、などと考えていると今回はエライことになるわけです。

同様に安倍晋三首相との信頼関係という言葉もよく出てきますが、「トランプ大統領にしてみると、自分のいうことを聞く相手だけが信用できる、という話になっているだけで、だからと言って、政策的にどうするかはまったく別な問題だ」というご指摘は、まさに私もそう思います。

大体ウォールストリートのみなさんが「信頼している」というときは、「俺のいうことをよく聞いてくれている」、という意味ですから、相手をリスペクトしているという意味とはかなり違う場合が多いのです。ウォールストリート出身の彼がそう考えている可能性は十分高く、藤原先生の考察はかなり鋭い。

結果的に「影響が大きすぎてやれるはずもない……」と誰もが思っている自動車関税も「思いつき」でやってしまう可能性は否定できません。この場合、順風満帆なアメリカ経済における唯一のリスク、と申し上げてきたトランプリスクが炸裂する、という事態になりますが、実はこうなると日本はかなり不利な状況にあります。みなさんは「米中貿易摩擦」という言い方をされますが、この件に関してはこれから説明しますが、実は米中は完全にウィンウィンの関係で、これはある意味「日米」貿易摩擦の再燃、と言えましょう。

アメリカ国内における自動車生産の半分近くはすでにトヨタなどの日本企業だ、との主張もされていますし、実際に出てきている数字を見ると、日本の対米輸出は160万台と、ピーク時の半分くらいになっています。さらにアメリカで販売されている日本製自動車の6割が現地生産分であり、他国に比べても現地生産比率は進んでいると主張可能に見えるかもしれませんね。しかしながら……。

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