西洋は「信じる宗教」、日本は「感じる宗教」 山折哲雄×上田紀行(その4)

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 これまで「和魂漢才」と「和魂洋才」で生きてきた日本人。グローバル化が急速に進む中で、日本人はあらためて「日本文明とは何か」「日本人とは何か」を問われている。これからの時代を生き抜くために、日本人に求められる教養とは何か――。 宗教学者の山折哲雄氏が、有識者との対談を通して、日本人の教養を探る。
 第2回目は、宗教学者で東京工業大学教授の上田紀行氏をを迎えて、教養と宗教の関係について語る。
(企画協力:こころを育む総合フォーラム

※ 対談(その1):教養の出発点は、「日本人とは何か」

  対談(その2):日本人の「心イズム」とは何か?

  対談(その3):西洋に深い影響を与えた、日本人リーダー

科学技術の世界に宗教界が何を言うかが、問われる

山折:やっぱり今、科学技術が非常に発達してしまった時代だから、その科学技術の世界に対して宗教界が何を言うか、宗教者が何を言うかがものすごく問われている。

私はよく科学者に問いを突きつけるんです。いやらしい問いを。

私は生命科学の最先端の分野で話題になっている遺伝子というものを、一度も実感したことがない。生命体としては存在を実感しない。しかし、その存在は確実に実証されている。それに対して、たとえば本を読んで感動するとか、スポーツ選手のすごい演技を見て感動するとか、そういう霊的な体験は実感できる。しかし、その霊的なものの存在は証明することはできない。

それで科学者に聞くんです。「あなた、遺伝子を実感できますか?」と。すると半分の科学者は、「実感できる」と言う。だけどこれはちょっと強弁している感じだな。私はあんまり信用していない。宗教者はこの実感のレベルで、科学に対してモノを言わなければならない。

たとえば、「クオーク(素粒子)は色がついているから色でイメージできる」と科学者は言う。色で実感しているのか、実感していると自分に説明しているのか。しかし、半分の科学者は「実感できない」と言う。私と同じですよ。

要するに、実感できないものを研究して、しかも人間の命を左右するたいへんな発見をしていて、いろいろな薬までつくったりしている。それは科学者の倫理的な責任とどうかかわるのか。もっともっと宗教者は追及しなければならない問題です。しかし、ほとんど出てきません。

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