自販機横「無料レンタル傘」の秀逸な仕組み ダイドーが展開、傘は電車内の忘れ物再利用

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持ち手には小さく「DyDo」のロゴと「レンタル傘」の文字が入る(筆者撮影)

この忘れ物傘の再利用、実際に多田さんをはじめとするダイドーのスタッフが実際に各鉄道会社に出向き、ふさわしい傘を選ぶ作業をしているとか。骨が折れかかっていたり、サビていたりする壊れかけの傘はもちろん使えない。ビニール傘のような壊れやすい傘も同様だ。さらに持ち手の部分がまっすぐなタイプはBOXにかけることができないのでNG……と、条件を満たす傘を選んでメンテナンス、そして持ち手に「レンタル用」「DyDo」のロゴシールを貼り付けて利用しているという。

「忘れ物以外の傘でも弊社のロゴを小さく入れる程度にしています。広告宣伝が目的なら大きくしてもいいのですが、レンタルアンブレラは地域への貢献が基本的な目的ですから」

では、困ったときのために設置場所を教えてもらいましょう……。

「あ、残念ですが、それはお話できません」

やっぱり盗られるから?

「いえ、約500台という設置数はなんとなく決まっているのですが、設置場所は固定ではないんです。ご利用の状況などを鑑みて、営業スタッフの判断で場所を変更することもありまして」

「より便利な場所に」模索

これこそが、ダイドーの誇るキメの細かさ。全国の営業所のスタッフは、それぞれの担当エリアをくまなく周り、自販機ごとの特徴を誰よりも理解している。そのスタッフたちがレンタルアンブレラの管理も行っているのだが、利用状況や返却率などを踏まえて随時“より便利な場所に”とサービスの向上を目指して模索を続けているのだとか。

「営業車には補充用のドリンクや自販機の掃除用具はもちろんですが、レンタルアンブレラの予備もちゃんと積んでいて、様子をみて補充したり壊れている傘があればピックアップしたりしています」

実はダイドー、その売上の大半を自販機が占めているのだという。新入社員はみな“自動販売機はショーケース”と教育され、そのケアの大切さを叩き込まれる。そんなスタッフたちが、レンタルアンブレラも丁寧にケアをしているのだから、そのサービスの充実ぶりたるや、推して知るべしである。

「今後の展開についてははっきりとしたことは言えませんが、『おかげさまで雨に濡れずに済んで助かりました』といった声をお客様からもよく頂いています。地域の方々に喜んでいただけることがわれわれにとって大きなことですから、こうした地域貢献のサービスはレンタルアンブレラに限らずこれからも積極的に取り組んでいきたいですね」

自販機のダイドー、恐るべし。そして、このレンタルアンブレラ、雨に悩まされる今の季節、見かけたら喜んで使わせてもらいたいものだ。もちろん、後日ちゃんと返しにいくことを忘れずに。

鼠入 昌史 ライター

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そいり まさし / Masashi Soiri

週刊誌・月刊誌などを中心に野球、歴史、鉄道などのジャンルで活躍中。共著に『特急・急行 トレインマーク図鑑』(双葉社)。

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