「年金の繰り下げ」は100%おトクとは言えない 「年の差婚」をした夫婦は特に要注意!

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しかし、もしも中嶋さんが老齢厚生年金を繰り下げると、繰り下げている間、加給年金も支給されません。加給年金は本来、老齢厚生年金に上乗せして支給されるものであるため、老齢厚生年金が支給されなければ加給年金も受け取れないのです。

さて、ここで知っておきたいのが、年金を繰り下げ、なおかつ加給年金を受け取る方法です。前述のとおり、繰り下げ請求は、老齢基礎年金だけ、老齢厚生年金だけなど、別々にすることが可能です。つまり、加給年金が受け取れないのは、老齢厚生年金を繰り下げている間であり、老齢基礎年金だけを繰り下げするなら、加給年金は支給されます。加給年金を受けたいのであれば老齢厚生年金は繰り下げず、老齢基礎年金だけを繰り下げ支給にすればいいのです。

前述のとおり、加給年金は妻の年金が出るまでの間、手当のように支給されるものなので、年金そのものがなくてもいいのなら手当もいらないですよね、といった意味合いです。

ちなみに、将来、加給年金分が上乗せされることもありません。

では加給年金の金額はいくらでしょうか。一律で年額39万8000円です。

支給されるのは、妻が65歳になるまでの間ですから、5歳違いの中嶋さんは5年間で約200万円。もし妻が7歳下なら7年で約280万円、10歳下なら約400万円など、妻との年齢差が大きいほど額が多くなります。

繰り下げ支給の「損益分岐点」は12年が目安

つまり、加給年金がなくなっても老齢厚生年金を繰り下げ支給にした方が得か、繰り下げるのは老齢基礎年金だけにするか、しっかり考えて判断する必要があるでしょう。夫婦の年齢差によって損得が違ってくるわけで、夫婦での受け取り額を考慮して戦略を立てる必要がある、というわけです。

ちなみに、妻が厚生年金に20年以上加入し老齢厚生年金を受け取っている場合や、妻の方が年上の夫婦では、加給年金は支給されません。妻の加入期間は、年に1度送られてくる「ねんきん定期便」で確認できます。

加給年金が支給されない人や、夫婦の年齢差が小さくて加給年金の支給期間が短い場合は、老齢厚生年金も繰り下げ支給にしたほうが有利になる可能性が高くなりますが、セミナーなどでよく聞かれるのが、「長生きすれば繰り下げ支給の方が得だが、長生きしないと損してしまう。どうしていいのかわからない」という声です。

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