安倍首相大慌て!トランプ心変わりの深刻度 日米首脳会談が「分かれ道」になる可能性

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一方、日本の首相官邸と外務省の政府関係者は、国家安全保障問題担当の大統領補佐官を務める強硬派のジョン・ボルトン氏がシンガポール首脳会議におけるこの種の取引を阻止するだろうという考えを崩していない。ボルトン氏は首脳会談中止を伝える大統領の手紙に関与していたようだ。だが、ワシントンの内部消息筋が伝えてくれたことには、これもまた幻想だ。

首脳会談の準備は、マイク・ポンペオ国務長官の厳密な管理下にあり、その後ろに立つのがマイク・ペンス副大統領だ。金委員長および北朝鮮首脳陣との関与の過程は、ポンペオ国務長官が中央情報局(CIA)の局長を務めていた時代に始まり、CIAと、先週トランプ大統領と会談した朝鮮人民軍および情報機関の高官である朝鮮労働党統一戦線の関係者を繋ぐルートを通して行われてきたものだ。大統領執務室での金副委員長との会談においてはボルトン氏の不在が目立ったが、それはポンペオ国務長官が氏を会談から遠ざけていたためだと言われている。

安倍首相が強く出るのはとてもリスキー

ボルトン氏の個人的見解がどうであれ、「同氏は目立たないようにしている。ずる賢いだけに、政治資本を投資してシンガポールへと急ぐトランプ大統領を思いとどまらせることは、無意味で危険だということは自分でもわかっているからだ」と、あるワシントンの内部消息筋が教えてくれた。

ボルトン氏は、北朝鮮政府との取引がすぐに崩壊し、その過程で自らの影響力も増すと計算しているのかもしれない。あるいは、自分の役割を駆使してイランとの緊張の高まりを推し進め、北朝鮮はより重要な前線から注意を逸らすものとして見ているかもしれない。イラク戦争に備えるジョージ・W・ブッシュ政権に起こったことを思い出すといい。

安倍首相が北朝鮮に対する厳しい姿勢を強く要求した場合、衝動で動くトランプ大統領を苛立たせるだけで終わってしまうかもしれない。「トランプ大統領の動きを予測するのは気の弱い人には向いていない」と、マサチューセッツ工科大学(MIT)国際研究センター所長で日本学者としても知られる、リチャード・サミュエルズ教授は話す。

「トランプ大統領は、(廃棄に)短距離ミサイルを含まないうえに北朝鮮を核兵器保有国として事実上認める取引を米国政府が結ぶことによって日本の安全を損なうのではないか、と日本政府が恐れるのももっともな理由を与えている。安倍首相にはそれを未然に防ぐための切り札がほとんどない」

安倍首相がトランプ大統領に、米国の集団安全保障へのコミットメントが明確でないことから、こうした種類の取引をされれば日本は自らの核抑止力を求めざるをえなくなるかもしれない、と伝えることも考えられる。「問題は、トランプ大統領がその意味を理解できないか、あるいは気にしないかもしれない、ということだ」とサミュエルズ教授。「日本政府は窮地に立たされている」。

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