ハーバード生の卵子は300万、卵子売買の今 卵子と精子はこう売買される

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精子はタンクごとフェデックスで出荷

バークレーにあるザ・スパーム・バンク・オブ・カリフォルニア(TSBC)は、非営利の精子バンクだ。オンラインのチャットやeメール、電話で年間に400~500人から注文があり、1年に12~15人のベビーが産まれるという。

精子を液体窒素タンクから取り出す、ザ・スパーム・バンク・オブ・カリフォルニアのルビー氏

同団体のエグゼクティブディレクターであるアリス・ルビー氏は「レズビアンや不妊に悩む夫婦の利用者が増えている」と説明する。現在では、レズビアンの利用者が全体の3分の2を占めるそうだ。

精子提供者の大部分は大学生や地元の社会人で、普通のナイスガイがほとんど。「友人が不妊なので助けたい」といった、良心的な動機からドナーになる人が多い。TSBCでは、2カ月間のスクリーニング中にドナーへの報酬支払いはない。正式に認められても、1回当たりの報酬は100ドルにすぎない。ルビー氏は「精子提供で本当に人助けしたい人しか続かない」と言う。

ドナーの精子は液体窒素タンクで保存すれば、通常7日から10日はもつ。出荷の際は、そのタンクごとフェデックスで顧客に送る。

TSBCでは、米国外にも精子を出荷している。「日本の利用者のほとんどがシングルマザーで、同じ日本人の精子を求める」(ルビー氏)。日本以外では豪州、アイルランド、ドイツ、デンマークなどに精子を出荷したことがあるが、各国の法規制により税関で引っかかった場合、最長10日しかもたない精子が死んでしまうこともあるという。

こうした精子バンクを利用する人はさまざまだ。IT企業で働くケリー・キャンベルさん(仮名、46)は40代になったとき、「子どもができない年齢になるまでに、子どもが絶対欲しい」と強く思った。「すてきな男性と結婚し子どもを持つのが理想だが、身近にいない。両親が離婚したこともあり、間違った結婚はしたくなかった」。

そこでまず知り合いの男性に頼み込み、ドナーになってもらったが、1回目の人工授精は失敗。半年後に精子バンクに電話し、学歴が高く、健康な精子を購入した。そして42歳のときに試した3度目の人工授精が成功し、女の子を出産した。

精子バンク関係者によると、軍人、消防士、警察官など、危険な職業に就く者が精子を保存するケースも多いという。夫がアフガニスタン出征前に精子バンクを利用し、精子を冷凍保存。戦死した夫の精子を解凍して妊娠し、夫にそっくりの息子を得たという例もある。

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