アメリカ経済の「真のリスク」とは何か 「バブル崩壊は間近だ」という分析は間違い

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むしろ、最近にわかに気になり始めたのが、この問題なのです。出典はウォール・ストリート・ジャーナルです。ここでは日本語版を引用します。「NFIB(全米独立起業連盟)によると、中小企業経営者のうち、自社の抱える唯一最大のビジネス上の問題は、業務に適した従業員を見つけることだと考える割合が22%に上り、税金や規制の問題より多かったという」

ということで、これは大変な事態だと言っていい。これも有料メルマガでは詳しく解説していますが、実際、全米の失業率が3.9%ということは「失業者すべてに仕事を与えてもまだ仕事がある」という水準だし、ハワイやカリフォルニアなどの失業率はすでに2%台!! になってしまっているという現実があります。つまり労働者、特に高度な技術を持つ労働者を探すのは、どの企業にとっても至難の業で、さらに全米の出生率は下降に転じている、というデータまで出てきています。

アメリカが移民制限をし始めたら最大の経済停滞原因に

いつも申し上げているように、アメリカは先進国で唯一若年労働人口が増え続ける国で、2050年までそれは続きます。つまり、経済成長は約束されたも同然なわけですが、「このままいくと2050年以降は怪しい」、ということになります。ましてや移民制限などをしようものなら、それがアメリカ経済を停滞させる最大の原因になるでしょう。

移民制限などはトランプ大統領の個人的な思いつきに過ぎないので、当初は「大したことはないだろう」、と少なくともワタクシは高を括っておりました。しかし、この記事にある通り、共和党保守派全体がそちらの方向に大きく動き出していること、またアメリカ国民の中でも「これは経済的な問題ではなく、文化の問題だ」、という声が拡大中であることなどを考慮すると、これは結構厳しい問題になるな、という予感がいたします。

個人的な話ですが、私もアメリカに会社を持っている関係でアメリカの労働ビザを保有しているわけですが、実は、先日の審査の時、これまでには全く言われたことのないことを言われて、愕然としました。

これまでは、「移民局としては、あなたのように、アメリカ合衆国に納税もしてくれて、がんばって事業を起こしてくれている人は大歓迎で、引き続き頑張ってください」、と言われるのがお決まりだったのですが、前回の審査時には「あなたは日本でも十分な収入があるのに、なぜ、わざわざアメリカ合衆国で会社を作って仕事をする必要があるのか?」と質問され、正直びっくりしたわけです。

これまで10年以上アメリカ合衆国に納税をし、300人以上の雇用を生み出してきたのに、その貢献に感謝されるどころか、「そもそもあなたはアメリカに来る必要性がないのではないか」、というわけです。同じような境遇の友人(ドイツ人、イギリス人、デンマーク人など)と話したところ、「お前は日本人だからそんなもんで済んでるが、こっちはもっとひどいことを言われているんだよ。あからさまに『帰ったらどうだ』、と言われるからね。ロシア人あたりになるともっとひどいぜ!」というのですから、これは尋常ではありませんね。

「自由の国アメリカ」・・・は夢になりつつあるのかもしれません。いずれにせよ、この移民(外国人労働者)問題こそがアメリカ経済を躓かせる要因になるかもしれず、注意が必要だと思われます。

(本編はここで終了です。次ページからは競馬好きの筆者が、週末の人気レースを予想するコーナーです。あらかじめご了承下さい。なお今回は日本ダービー開催につき、ぐっちーさん、山崎元さん、吉崎達彦さん3人の執筆陣の予想を掲載します)

次ページここからは競馬コーナー。週末は「日本ダービー」だ!
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