「勉強熱」がハンパない中国人の凄まじい実態 歌番組より勉強番組が人気という過熱ぶり

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大人気の学習アプリ「得到」の画面(著者撮影)

「『得到』は2015年にできた学習アプリで、もともとCCTV(中国中央テレビ)のプロデューサーだった羅振宇氏が立ち上げたもの。中国ではとても有名で、多くのビジネスマンや起業家も、このアプリのコンテンツを愛読していますよ。

いくつかのコーナーに分かれており、『每天听本书』(毎日1冊の本を読む)では、30分で名著のサマリーを読んだり聞いたりすることができ、『大咖专栏』(専門家の深掘りエッセイ)では、経済学、政治学、文学、心理学、幼児教育、マーケティングなどあらゆる分野の専門家が書いたエッセイを読むことができます。

専門家のコーナーは1人の講師ごとに1レッスン、年間約200元(約3500円)。ファンが多い講師の場合、読者数は20万人から30万人はいますね。もちろん、レッスンの支払いはスマホ上で決済できますし、自分の好きな時間に、好きなだけ読んだり聞いたりすることができます」

宋氏のアプリを見せてもらったところ、アメリカのスタンフォード大学の教授や、テンセントの元品質管理部長、小学校のカリスマ教師、投資家など、専門家の顔写真とコンテンツのリストがずらりと並んでいた。それぞれの専門家に専門の担当編集者がついており、1つの読み物は数分で読み切ることができる。一般の読者にわかりやすく内容をかみ砕き、年間を通して、1つのテーマを理解できる構成になっているという。

宋氏はこの2年以上、毎日朝食を食べながら、あるいは、シャワーを浴びながら、音声でコンテンツを聞くことが習慣になったそうで「自分の脳のシワがどんどん増えていく感じ。知的喜びを感じる」という。

「具体的に、このコンテンツが自分のビジネスのこれを作るヒントになった、ということは言いにくいのですが、ビジネス・パートナーと商談していたり、新しい発想が必要とされるとき、頭の引き出しから、たくさんのアイデアが出せるようになってきたり、ひらめきにつながっている、と自分で実感できるのは、この学習アプリのおかげだと思っています」

国民的歌番組より、勉強番組を見る

「得到」の社長である羅振宇氏は、ここ数年、大みそかから元旦にかけて、深圳テレビで「時間的朋友」(時間の友だち)という生放送の番組に出演しているが、昨年の視聴率は中国の国民的歌番組(日本の紅白歌合戦のようなもの)の視聴率を超えたと話題になったほどだ。

日本のメディアなどを通して、中国企業の発展やイノベーションに圧倒される機会が増えたと感じている日本人は多いと思う。しかし、今、表面に現れている変化の内側では、寝る間も惜しんで何かを必死で得ようとする彼らの爆発的なエネルギーの存在がある。今回の取材では、その片鱗を少しだけ垣間見ることができ、末恐ろしいような、うらやましいような気持ちにさせられた。

中島 恵 ジャーナリスト

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なかじま けい / Kei Nakajima

山梨県生まれ。北京大学、香港中文大学に留学。新聞記者を経て、フリ―に。著書に『なぜ中国人は財布を持たないのか』『中国人エリートは日本人をこう見る』『中国人の誤解 日本人の誤解』(すべて日本経済新聞出版社)、『なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?』『中国人エリートは日本をめざす』(ともに中央公論新社)、『「爆買い後」、彼らはどこに向かうのか?』(プレジデント社)などがある。

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