発達障害の僕たちが人にあまり言えない本音 当事者3人が座談会で明かした「生きづらさ」

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山村:いや、単純にカラーバリエーションの中でいちばん黒がカッコよかったからです。今、新たな補聴器を注文していて、来週受け取るものは緑です。

光武:ファッション性に優れたカッコいい補聴器、いいかもね。

自己肯定感があれば間違った方向へ走りにくい

――吉田さんはおそらく発達障害のグレーゾーンだけど、環境に恵まれていたため病院を受診したことがないと先ほどおっしゃっていましたよね。どういう点から自分は発達障害のグレーゾーンなのではないかと思ったのですか?

吉田:ある日、発達障害の症例集の本を読んでいたら、「僕のことじゃん」と思う例がたくさんあって。僕、文字や物体に対するこだわりが強く、幼稚園の頃から漢字が読めました。親からは「あら、すごいね」と軽い感じで褒められて、それでうれしくてどんどん漢字を覚えました。だから、特別な勉強をしなくても中2のときに漢検2級を取れました。あと、ごっこ遊びが苦手で1人でダンボールや台紙などを切っておもちゃを作るのが好きでした。

――そのような特性に対し、ご家族は「この子は他の子とちょっと違っておかしい」と思われなかったのでしょうか?

吉田:それが、恵まれていたといえばそう言える部分で、両親が共働きで忙しかったため、幼稚園の頃は実家の近所の祖父母の家に預けられていたんです。これも読んだ本に書いてあったのですが、発達障害を持っている人は極端に子どもか極端に高齢者と一緒にいると受け入れられやすいそうです。少しドジだったりしても、おじいちゃん・おばあちゃんからすると「可愛い」で済むじゃないですか。

そして、子どもと同じコミュニティにいると同じレベルなのであまり違和感を感じない。発達障害の特性から問題行動を起こしてしまう人もいますが、小学校に入るまでの時期をそういう環境で過ごせたのはある種よかったのかもしれません。環境が自分の特性を受け入れてくれれば、極端な問題行動に走りにくいです。自己肯定感が保たれている部分があるので、「どうしてわかってくれないんだ」と、間違った方向へ走るのを防げる。

――光武さんはどうでしたか?

光武:就学前はそこまで問題ありませんでしたが、学校に入ってから苦労しました。衝動性の塊みたいな子どもだったので、何かが気になってしまうと授業中でも図書室に行っちゃう(笑)。特に僕の地元は田舎なので、異質なものという目線は感じていました。

――でも、大学に入るといろいろな人がいますよね。大学ではどうでしたか?

光武:でもやっぱり、歪んだ状態で大学に行ってしまったので浮いていました。吉田君は中2のときに漢検2級でしょ? 僕はね、中学生のときにマルクスの関連書籍を読み始めてマルキシズムに走ってしまったの。経済学。

――周りからすると、ちょっと中二病のように見えますよね(笑)。

光武:完全に中二病です(笑)。僕、「この愚民たちを革命で導くために生きているんだ」と本気で思っていましたもん。だから、よく先生に呼び出されていました。税に関するパンフレットを渡されて「国民の義務として税を払うこと」についての作文の宿題が出たときも「これを中学生に読ませ、かつ、宿題にするということについて。税を払うことを国民の義務としてわれわれに学生の頃から洗脳するのは、無批判に税を払う人間を再生産するための文部科学省の装置である」みたいなことを大真面目に書いて怒られました(笑)。

他にも、「なぜ校則で、女子は髪の毛を結ぶゴムの色は黒か茶でないといけないのか。そうしたルールがルールとして存在するための根拠を指し示してください」と反発したこともあります。そのまま大人になってしまったので、それは白い目で見られますよね。唯一逃れる手段は国外逃亡しかないと思って、留学しました。

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