至高の雪男、皆川賢太郎の「スキー連盟」改革 競技本部長として強い組織を作るために奮闘

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――SAJを運営するうえで重視していることは何ですか?

大事な事はマーケティングです、その中でもSAJには競技とは別に教育をつかさどる資格制度があります。そこから生まれる原資をしっかり供給すれば国の助成金に依存しなくても独立自尊できる事が大切。選手たちにトップ・オブ・トップの環境をいつか与えることができるようになるので。たとえば、スキー検定の1級や準指導員が取れる、どういう滑りをするかっていう教育プログラムを持っているので、外国にもそれらを輸出したい。そして、外国人が習いに来るような仕組みに変えたいです。それがやっぱり僕としてはやりたいところです。

日本のスキー産業の復活に期待したい

――日本ではスキー、スノーボード人口が減っているにもかかわらず、「日本で滑りたい、日本の雪が好き、日本に行きたい」という、訪日外国人が増えてきています。そこに対する受け皿ができていない部分が多いと感じますか?

冬の競技に対して熱く自らの信念を話した皆川氏。原理原則を重視するという姿勢を強調した(撮影:尾形文繁)

多いです、多いです。僕がこの20~30年海外に出て思うのは、日本ほどの雪資源が豊富なところは本当に世界にないですよ。

1990年代初めのバブル崩壊がいちばん問題だったと思いますが、投資が止まったのです。そのとき、リゾートや会社や考え方は国内需要に依存していた。その後、株価が3分の1になり、比例してスキー人口も少なくなった。

人間は所得が減れば使えるお金も減る、もちろん余暇にもおカネを使えなくなります。昔と違い今では、遠出しておカネを使っていた余暇を近場の映画で済ますような都市型に変化していった。結局、行き先が見えなくなった日本の企業はリゾートに投資ができなくなった。それで今日まで停滞しているのが今です。だけど、幸いなことに日本は雪資源に恵まれている。

今まで発展途上だったといわれている国の人たちがおカネで余暇を求めるようになり、インドや中国、ASEANの人たちが自国にないものを求めに来ている。日本にはガソリンがなく他の国で買うように、彼らになくて私たちにあるものが雪なのです。観光資源としてはすごく優位性が高い。だけど、リゾートが再投資されていない。つまり彼らが自国でファイブスターホテルに泊まっているところを、日本ではビジネスホテルのような簡易ホテルで、部屋も狭くて、ご飯もそこまでおいしいとはいえなくてというスキー場に滞在している。雪が良くて来ているのが現状です。

中国では、現在1600万人のスキー、スノーボード人口がいる。これを2022年までには3000万人にするという目標があります。将来的には3億人にすると言われているんですよ。日本がバブルのときでも1800万人だったので……。10倍どころじゃありません。その人たちが隣国にいて、その人たちには天然の雪がないのです。日本におけるウインタースポーツはそういう見込みがある産業だから本当に楽しくて。

――日本がスキー・スノボ業界の仕組みを整えるのに先進国であるヨーロッパの事例などは参考になりますか?

ヨーロッパもやっぱり産業が縮小しています。アジアの経済発展に関してものすごい興味がありますよ。今では世界中がマーケットです。昔は自分たちのヨーロッパとか、アメリカとかが産業基盤と考えれば良かったですが、先進国でも生活や文化は変わります。スポーツ自体の考え方から興味が薄まる競技も増えてくるでしょう、その中で途上国の民度があがり、余暇やスポーツを楽しむ受け皿を担うことが産業を維持する方法だと私は思います。そういう役割がアジアには大きいと思っています。

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