開幕6連勝!辻監督語る西武「復活」への改革 Bクラスから昨季2位、今季優勝も夢ではない

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「今の若い子は…とは言いたくないし、言わないようにしていますよ。でも、やっぱり昔とは違う。僕らの頃はもっとギラギラしていて、自分が補欠で同じポジションの人が怪我をしたら、『しめしめ、チャンスだ』って思ったりしていたんだけどね(笑)。

本拠地メットライフドームのバックネット裏スタンド上段に設置されたトラックマン(撮影:風間仁一郎)

今では、同じポジションの選手が仲良くメシを食ったり、遊びに行ったりしていますよね。すごいなぁって思いますよ。でも、それがダメだということはないんです。仲良くしていたって、心の中で負けないという強い気持ちがあればいいわけだから」

時代の移ろいとともに、選手たちの雰囲気も、指導方法も変わっていく。

ライオンズは昨秋、球団内に「IT戦略室」を立ち上げ、トラックマン(高性能弾道測定器)を導入し、微細なデータを競技に活かす態勢を整えた。

選手の感覚を大切にしたい

「必要な選手は活用すればいい。選手によると思います。僕は現役生活の晩年にヤクルトに移籍して野村克也さんの下でID野球を勉強させてもらいましたが、すでに打撃技術が自分の中で確立されていた段階だったから合わなかった。

データは確かに参考になるけど、『それでも外れることがある』というのが僕は選手として嫌で、だったら自分が長年培ってきた経験値や感性を大事にしたかったのです。ただ、技術が未熟な選手はデータに頼ることが必要なこともあるでしょう」

トレーニングについても、辻は同じ見解を示す。現役時代、オフの間にウエイトトレーニングを実施したところ、キャンプで効率よく調整できた経験があった。しかし、取り入れるかどうかは選手次第だ。無理強いはせず、選手それぞれの「合う」「合わない」という感覚を尊重したいという。

本拠地・メットライフドーム。今シーズン、埼玉西武ライオンズはどこまで成績を伸ばせるか(撮影:風間仁一郎)

「選手たちには、なんでもかんでも教えてもらえると思わずに、自分からいろんな選手をどんどん見て学んでほしいですよ。いろんなタイプの選手がいる中で、どうやってレギュラーとしてメシを食っていくか。それは各選手が納得する方法を見つけて自分で作り上げていくしかない。

この人すごいな、どこが違うんだろう? 守備はどうやっているんだろう? そう思ったら、とにかく観察する。データも役に立つかもしれないけど、見る力って本当に必要です。あとはそれを自分で試して、納得できたら取り入れる。その繰り返しですよ」

選手たちには、「僕が西武ファンだったら、今のチームは絶対面白いと思う」と、指揮官である辻が誰よりも希望を抱いている。

「ファンのみなさんがこれだけ集まってくれるのは、きっと今のチームに魅力を感じてくれているからだと思います。プロとして勝ち負けはもちろん大事。でも、ファンに『いい試合だったね』と言われることはもっと大事。長いシーズンには当然負けもあるわけですからね。とにかく、1点を諦めずに戦う姿を、選手たちがいかに見せられるか。選手には、そこだけにはこだわれと伝えています」

(文中敬称略)

岡田 真理 ライター

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おかだ まり / Mari Okada

1978年静岡県生まれ、立教大学文学部卒業。プロアスリートのマネジャーを経て2007年よりフリーランスライターとして活動。『週刊ベースボール』『がっつり!プロ野球』『スポーツナビ』などで執筆するほか、『谷繁流キャッチャー思考』(日本文芸社)『北島康介トレーニング・クロニクル』(ベースボール・マガジン社)などの書籍で構成を担当。2014年に野球を通じてチャリティーなどの社会貢献活動を行うNPO法人「ベースボール・レジェンド・ファウンデーション」を設立。「プロ野球静岡県人会」の事務局長、および侍ジャパンU12監督・仁志敏久氏が主宰する野球振興プロジェクト「ホームベースクラブ」の運営も行っている。

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