アマゾン「最強会員サービス」に死角はないか 米国本社プライム事業の責任者に直撃

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――スマートスピーカーの「アマゾンエコー」が世界的にヒットしました。具体的なプライムサービスとの相乗効果は。

エコーの使われ方として最も一般的なのが、音楽を聞くこと。私自身、自宅に複数台のエコー端末を置いており、1歳の娘は、毎日のように会員向けの音楽配信サービス「アマゾンミュージック」でディズニーの音楽を聞いている。もうひとつの価値は、音声による買い物だ。エコーに話しかけるだけで、思いついたときにすぐ、ほかの動作なしに買い物リストに商品を追加することができる。

アマゾンエコーは3月30日から一般販売がスタート。自社ECサイト上のほか、全国の家電量販店でも取り扱う(写真:尾形文繁)

プライムとエコー。これほどパワフルな組み合わせはないと自負している。われわれはプライムを通じて、顧客の生活を毎日少しずつでもよくしたい。買い物だけではなく、見る、読む、聞く、さまざまなサービスを提供するうえで、デバイスが活躍する範囲は広がっていくだろう。

――プライムの会員費は各国で異なります。日本の価格(年間税込3900円)は破格ともいわれますが、これを見直す可能性はありますか。

ほかのどんなビジネスもそうだろうが、価格改定の議論や意思決定はものすごく慎重に行っている。もし会員費の値上げがあるとすれば、それで得た資金はプライムのサービスをさらに拡充するために使わなければならない。われわれにとって、顧客と長期的なリレーションを築くことが最も重要だからだ。

アマゾンはこれまでも、サービス向上のために多大な投資を行ってきた。その意味においては、決して頻繁に起こることではないが、価格を再評価することもあり得る。ただ、たとえ改定を行ったとしても、顧客が払う価格の何倍もの価値、見返りを提供し続けることは変わらない。

アマゾンと取引先との関係は今後どうなる

――日本ではアマゾンに対する公正取引委員会の立ち入り調査が話題となっています。プライムサービスの拡大は、出品者、仕入れ先メーカーといったステークホルダーとの関係にひずみを生んでいないでしょうか。

ジャミル・ガーニ(Jamil Ghani)/アマゾン・ドット・コム プライムインターナショナル担当バイスプレジデント。ハーバード大学大学院卒業後、米小売り大手ターゲットやウォルト・ディズニーなどを経て現職(撮影:尾形文繁)

公正取引委員会の調査については、私が回答することは適切ではないと思っている。一般化して話すと、まず大原則として、アマゾンにとって最も重要なのは、顧客だ。われわれはメーカーや配送業者と一緒になって、顧客によりよいサービスを提供しようと考えている。その活動を通して、すべての当事者がプラスを得られる関係性を目指している。

2017年のプライムデーでは、大手から中小まで多くの出品者が、おしなべて多大な販売実績を上げた。これ以外にもベンダーや出品者とうまく協業できているケースが無数にあり、アマゾンとしてパートナー企業の商売の拡大に貢献できていると信じている。

――配送業者との関係はどうですか。

出品者のケースと同様だ。顧客に質の高いサービスを提供するため、配送パートナー各社との協業は一層進んでおり、相互にビジネスを拡大できていると思っている。日本の配送は非常に成熟度が高く、特にラストワンマイルの配送効率やスピードで学ぶ点が多い。「もっと早く届けてほしい」という全世界的な強いニーズがあるので、それに応えていきたい。

長瀧 菜摘 東洋経済 記者

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ながたき なつみ / Natsumi Nagataki

​1989年生まれ。兵庫県神戸市出身。中央大学総合政策学部卒。2011年の入社以来、記者として化粧品・トイレタリー、自動車・建設機械などの業界を担当。2014年から東洋経済オンライン編集部、2016年に記者部門に戻り、以降IT・ネット業界を4年半担当。アマゾン、楽天、LINE、メルカリなど国内外大手のほか、スタートアップを幅広く取材。2021年から編集部門にて週刊東洋経済の特集企画などを担当。「すごいベンチャー100」の特集には記者・編集者として6年ほど参画。2023年10月から再び東洋経済オンライン編集部。

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