日本語学校化する「夜間中学」の残念な実情 前川喜平氏と歌人・鳥居さんが訴える

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「日本人の多くは、発展途上国に学校を建てることを応援するし、『子どもたちに勉強させてあげよう』って言いますよね。けれど、なぜ同じ国の人には『勉強なんか……』となってしまうのか不思議です。私にとって、うれしい言葉ではありません」

勉強したいなら独学ですればいい、と言われることもあると鳥居さん。しかし、義務教育9年分の勉強を独学でするのは困難だと訴える。仕事や日常生活と両立する難しさもある。また、わからないところがあっても聞く相手がおらず、そもそも何がわからないのかがわからなかったりもするからだ。「独学で済むのなら、発展途上国にも日本にも学校はいらないということになる」とも話す。

あらゆる人々が望む教育を受けられる社会の実現

鳥居さんは「指導者たちはすべての子どもに対し、無料で質の高い初等・中等教育を約束できるように、この機会を逃してはなりません」と、2014年にノーベル平和賞を受賞したマララさんのスピーチをひき、あらゆる人々が望む教育を受けられる社会の実現を訴える。

前川氏も、夜間中学の現状に問題意識を持ち続けてきた一人だ。形式卒業者が夜間中学に入れない問題について、「文科省は知っていた、けれどずっと見て見ぬふりをしていました。怠慢、いや、不作為の責任と言ったほうがいい」ときっぱり口にする。

風向きが変わったのは2014年。鳥居さんたちの活動によって、衆議院議員・馳浩氏を中心とした超党派の議員連盟が結成され、文科省の対応も変わった。そして、形式卒業者の問題も解決したという。

議員連盟はさらに2016年、「教育機会確保法」を成立・公布させる。これは「夜間中学校を増やす」「学校に行きたくない子どもたちが、フリースクールなどでも学べるシステムを整備する」といった内容。義務教育を受けられなかった人々が学びの機会を取り戻せるほか、不登校の子どもへも教育の機会を提供するものだと前川氏は説明する。

「最近まで文科省の不登校対策は、学校への復帰が大前提という考え方でした。けれど、学校に行きたくない、学校以外の場所で学びたい、という人もいる。無理に学校に行かなくても、それ以外に学習機会があればいいんじゃないか、という法律です」

しかし、まだまだ課題は多い。その1つとして前川氏は、憲法第26条「教育を受ける権利、教育の義務」の第2項について、改正したほうがいいと提言。

すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。(憲法第26条2項)
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