日本語学校化する「夜間中学」の残念な実情 前川喜平氏と歌人・鳥居さんが訴える
その問題とは、中学校に十分に通えなかったにもかかわらず、卒業だけしてしまった「形式卒業」の人は、夜間中学には入れないということ。
鳥居さんは幼いころに両親が離婚し、引き取った母も死去。その後、養護施設で育てられた。しかしいじめや虐待に遭い、小学校の途中から学校に行けていない。だが形式上は中学を卒業しているため、夜間中学に入って学びなおしたくても、入学できなかった。この問題は、約70年間も放置されてきた。
「何もない一市民の声を、政治家は聞いてくれなかったりする。だからセーラー服を着るのは、政治家や教育関係者に興味を持ってもらうためにも大事なことでした。本当は肩書なんて必要ないんですけど、あったほうが話を聞いてもらえるのは確かで。それがセーラー服を着ている理由です」
結果的に、鳥居さんや支援者の訴えが文科省を動かし、2015年に形式卒業者も夜間中学への入学が認められるようになった。実はそのときの幹部が前川氏。以前から鳥居さんは対面を希望しており、関係者の協力があって、今回のイベント実現に至った経緯がある。
授業内容は、7~8割の外国人に合わせたものだった
念願かなって夜間中学に入れた鳥居さんだが、残念ながら、その内容は満足いくものではなかった。生徒の7~8割が外国人で、日本語もわからないため、授業内容も彼ら彼女らに合わせたものだったのだ。
「私のクラスでは、授業で『寿司(すし)』とか『柔道』の発音を練習しています。外国人生徒のための日本語教室化しているんですね。私はいつか高校に行って、大学にも行きたいんです。そのためにコツコツ勉強を頑張りたいのに、このままでは10年経っても行けないと思う」
鳥居さん以外にも、求める授業内容とのギャップに辟易し、休学や退学してしまう日本人生徒が少なくないという。そのような現状が明かされると、会場からは驚きの声が上がった。続けて鳥居さんは、勉強への思いを詠んだ自らの歌を紹介する。
慰めに「勉強など」と人は言う その勉強がしたかったのです
「学校に行って『宿題だるいな』と言い合ったり、お母さんに『そんなこと言ってないで、さっさとしなさい』としかられたり。そんな何でもない日常にとてもあこがれがあるし、奪われるべきではなかったという思いがあって。失った子ども時代は取り返せないけど、せめて履修するはずだった勉強だけでも取り戻したい思いがあります」
しかし、勉強をしたかった、と鳥居さんが吐露すると、周囲から「勉強なんかしたって意味ないよ、社会に出ても役に立たないし」と慰められることが多いという。それを聞くたびに、疑問や悲しさを抱いていたことを明かす。
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