日本が現金払い主義からまるで脱せない理由 キャッシュレス化が進む世界から周回遅れ

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IT技術と金融が融合した「フィンテック」が進行する中で、世界はいまや現金なしでの生活が当たり前になりつつある国や地域が増えているのだ。

フィンテックというのは、Finance(金融)とTechnology(技術)を組み合わせた新しい造語だが、いま世界はフィンテックに加えてAI(人工知能)技術、ロボテック技術などを組み合わせて、画期的な決済システムが導入されて現金なしでの生活が実現しようとしている。

現実に、スウェーデンのキャッシュ比率はわずか2%しかない。現金による買い物なども日常的に存在しないレベルになりつつある。スウェーデンが、ほぼ完璧に近いキャッシュレス化を実現している背景には、銀行が連合を組んで構築したモバイル決済サービス「スウィッシュ」がある。銀行口座と携帯電話の番号だけで個人認証をする技術が使われている。

キャッシュレス決済比率、日本はわずか2割程度?

キャッシュレス化が急速に進行する最大の理由は、「ビジネスの効率化」と言っていいだろう。現金の受け渡しといった煩雑な作業から解放される。

たとえば、2015年の「BIS(国際決済銀行)」のデータによれば、日本の1人当たりの年間カード決済額は4000ドルにも満たない。トップの米国(1万7000ドル超)の3分の1程度に過ぎない。日本の産業界全体の非効率化が叫ばれている中で、政府も本気を出してキャッシュレス化を推進しないと、日本はこの分野でも後れを取るのかもしれない。

実際、日本のキャッシュレス決済率の低さを示すデータを見ると大きなインパクトがある。

<キャッシュレス決済比率>
●日本……18%
●韓国……54%
●中国……55%
●米国……41%
(2015年、日本は内閣府、日本クレジット協会推進協議会、日本銀行、他国はEUROMONITOR INTERNATIONAL年次レポートより、経済産業省「FinTechビジョンについて」)

ちなみに、キャッシュレス決済比率の2016年の最新値では23.6%と増えているものの、2017年6月に閣議決定された「未来投資戦略2017――Society5.0の実現に向けた改革――」では、今後2027年6月までの10年間でキャッシュレス決済比率を4割程度に目指すことを決めている。

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