身長100cmで「2児の母」となった女性の人生観 早稲田大学で学び、2度の留学にも挑んだ

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子どもたちは4歳と2歳のやんちゃ盛りだ。保育園から帰宅後は競ってママに甘える。夏子さんの母親ぶりを、佐藤さんが教えてくれた。

例えば、子どもが何か悪いことをしても、“何でこんなことをしたの?”と時間をかけて話をきちんと聞くんです。頭ごなしに叱らず、子どもの気持ちを1回受け止めるところがすごいですよね。もちろん、毎回はできないと思いますが、そうしようと努めているのが、横で見ていてわかります」

夏子さんは「障害者にこそ子育てをすすめたい」と力説する。

私が結婚するときは、障害者の結婚はありえないとか、子どもを産むなんてありえないとか、すごく反対されたけど、子どもって、どんな親でも必要としてくれるじゃないですか。親の障害を否定しないし。私が歩けないことも当たり前のこととして受け入れるし。ホント、おすすめですよ。ただ、2歳差は大変。それだけが計画外でした(笑)」

理由を聞いてなるほどと共感できた。同時に、実行できる人は少ないだろうとも。夏子さんほど強い人はめったにいないから。

車イスだから、大変なのではない

「どうしてそんなふうに、いつも前を向いていられるんですか?」

インタビュー中、何度も浮かんだ疑問をぶつけると、少し考えてこう答えた。

「うーん、楽しいからかな。私だって落ち込むし、失敗もするけど、何かしているほうが楽しいじゃない。あと、信頼する人の手を借りながら、自分の毎日は自分で作れると信じているからです」

その言葉どおり、新しいことに次々とチャレンジしている。

昨年末にはなんと舞台デビューを果たした。女優の東ちづるさんのプロデュースで見世物小屋を復活しようと車イスのダンサー、寝たきり芸人、女装詩人など障害者やマイノリティーが多数集結。『月夜のからくりハウス』と名づけた一夜限りの舞台で、夏子さんは人魚の衣装を着て、小人プロレスのマネージャー役をした。

一夜限りで見世物小屋を復活させた『月夜のからくりハウス』にて舞台デビュー。中央が夏子さん(写真:槇野翔太)

やっぱり“違う”って、不思議だし、面白いし。特に今回は、人と違う自分の特性や強みを生かして表現したいと集まったので、本当に、いい意味での見世物になれたと思いますよ」

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