物覚えの悪い人が知らない記憶のカラクリ 大事なのは運動、ただし「過酷」は厳禁だ

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ここでお伝えしたいのは、どれだけ暗記テストで高得点をたたき出した人も、また、スケジュール帳の予定を忘れたことがないという自負がある人も、「記憶」にとって有効な手を打たないかぎり、必ず記憶力は下降の一途をたどる、ということです。

この理由は、「私たちの脳細胞は、毎日驚くべきペースで死んでいる」という目を背けたくなる事実にあります。

「記憶」とは紛れもなく脳によって行われる作業ですが、25歳を超えると脳細胞は1秒で約10万個も死んでいきます。それも、毎日24時間、絶えることなく、です。

また、「海馬」も1年で約1%ずつ小さくなります。

認知症などの疾患にかかっていなくても、放っておけばものすごい勢いで脳は「記憶しにくく」なっていくのです。

脳研究の世界で一大ブームの「BDNF」とは

なので、物覚えが悪くならないためにも、そして積極的に記憶力を上げる意味でも、「脳細胞は毎秒死ぬ」という事実を踏まえた有効な対策を打っていく必要があり、その対策こそが「運動」というわけです。

なぜ運動によって脳細胞の運命に逆行できるのかというと、体を動かすことで「BDNF」という脳内最強と呼ばれる物質が分泌されるためです。

この「BDNF」が分泌されると脳内のつながりが強化され、情報の伝達が驚異的に早まることがわかっていて、「BDNF」は科学者の間で「奇跡の物質」とも呼ばれています。

フィットネスバイクをこいだり、早歩きをしたりして記憶の定着率が高まったのも、「BDNF」が分泌されて記憶を補助したため、というわけです。

この「BDNF」が今、医学研究においてブームになっています。

BDNFが分泌されることで、

脳細胞が傷ついたり、死んだりするのを防ぐ
脳の細胞間のつながりを強化し、学習や記憶の力を高める
脳の細胞新生を促し、新しく生まれた細胞の生存をサポートする

など、脳にとって計りしれないメリットがもたらされることがわかってきたのです。

では、どうすればこの「BDNF」を分泌させて記憶力を強化することができるのでしょうか?

その条件も、最新科学は解明しています。

実は、どんな運動をするかによって高められる記憶力の種類は異なります。

次ページ現時点で科学が「最も脳に定着する」とした覚え方
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