N700Sも秘密あった「新幹線の先頭」なぜ違う 単なる見た目だけでなく性能も重視する

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新幹線N700Sの先頭形状は「デュアル スプリーム ウィング」形と呼ばれる(撮影:尾形文繁)

JR東海の次期新幹線車両N700Sがまもなく試験運転を開始する。その先頭形状は、現在の主力車両N700系にさらに磨きがかかった印象だ。

時速200km以上で走り続ける新幹線のトレードマークともいえるのが流線型の先頭部だ。先頭部の形状はスピードアップとともに変化してきた。しかし、なぜ最新の新幹線電車の先頭部形状は航空機のようなシンプルなものではなく、複雑なものとなっているのだろうか。

新幹線のスピードアップに大きく関係してくるのが空気抵抗だということは誰もが思い浮かぶことだろう。時速130km程度の速度域ならば力任せに走ることもできるが、時速200kmを超える速度域では空気抵抗が非常に大きくなるため、流線型の先頭部が必須なのは言うまでもない。

しかし空気抵抗の低減以外にも新幹線の先頭部形状を決定づける要素がある。そのひとつが「トンネル微気圧波」の低減である。

トンネル微気圧波を減らす

トンネル微気圧波とは「トンネルドン」とも呼ばれる騒音の一種である。新幹線がトンネルに進入すると、トンネル内の空気が圧縮され、トンネルの出口で破裂音を出す。空気鉄砲で言うところのシリンダーがトンネル、ピストンが新幹線だと思うとわかりやすい。

トンネル微気圧波を低減させるための手法のひとつは、車体の断面積を小さくすること。こうすればトンネル内の空間が広がり、空気の圧縮効果を低減させることができる。2階建て新幹線E1系、E4系を除く300系以降の新幹線電車の屋根高さが、100系よりも約40cm低くされた理由のひとつでもある。500系に至っては両肩と裾をそぎ落とした円筒形の車体を採用して話題を呼んだ。

設計最高速度に応じて先頭部の長さも決まってくる。1990年代半ばより鉄道車両にも数値流体力学(CFD)による解析が導入されるようになり、適切な先頭部の長さを得られるようになった。

営業用新幹線電車でCFDを最初に導入したのは500系で、1996年に先行車が登場した。500系は最高時速320kmで設計されており、当時前例がなかった15mという長さの先頭部が採用された。現在はE5系、H5系でも15mの先頭部長さを採用している。

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