交通データ「オープン化」はなぜ進まないのか 時刻や位置情報、自由に使えればもっと便利

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欧米で交通業界でもオープンデータ化が進んだ要因としては、公営の交通事業者が多く、行政と交通が強く結びついていることから、行政のデータ公開とともに交通に関してもオープン化が進展した点が挙げられる。一方で日本の交通事業者は民営・独立採算制であることが多く、交通事業者と行政の結びつきが強くない。そのため、行政がオープンデータ化を交通事業者に要望しづらく、交通事業者側も人手不足やデータ公開によるリスクによって及び腰になっている部分がある。そのため、オープンデータ化が現在もあまり進んでいない。

そんな中、2013年にはJR東日本・東京メトロ・総務省などが関わって坂村・東洋大教授(当時は東京大学教授)を座長とした「公共交通オープンデータ研究会」を立ち上げ、2014年には東京メトロで「オープンデータコンテスト」を開催した。今回の東京公共交通オープンデータチャレンジでは2020年の東京オリンピックに向けた想いも強い。坂村教授は「東京オリンピックに向けて交通のオープンデータ化をとにかく進める。前の開催地のリオやロンドンにも負けている現状では恥ずかしい」と語る。

地方のバスも世界中から検索できる

ところで、日本でもにわかに進みはじめた交通業界のオープンデータ化だが、そのメリットはどこにあるのだろうか。

東京大学の伊藤昌毅助教は、オープンデータは"橋渡し役"だという。「現在、バス事業者から違った形で提供されるデータをみんなが使いやすい形で提供することにより、経路案内サービスを提供する企業の手間が減る。すると経路案内に掲載しやすくなり、結果としてバスが利用されやすくなる。このように経路案内サービスとバス事業者が歩み寄れるポイントがオープンデータだ」(伊藤助教)。

オープンデータ化は経済効果も大きい。2014年の東京メトロオープンデータコンテストでは、登録ユーザーは2000人以上、応募作品は281にもなり、このときに生み出されたアプリの価値は総額6億円以上になった。この他にも「山梨県でバスデータをオープン化したところ、イスラエルのベンチャー企業が開発した経路検索アプリ『moovit』で検索できるようになった。このようにオープンデータ化で世界の英知に利用してもらえる」(伊藤助教)とグローバル化においてもメリットは大きい。

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