交通データ「オープン化」はなぜ進まないのか 時刻や位置情報、自由に使えればもっと便利

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「東京公共交通オープンデータチャレンジ」のポスターは駅にも掲示されている(筆者撮影)

もう1つは「各データの意味がわかりづらく、利用しづらい」ことだ。オープンデータの定義に重要な要素として、オープン・ナレッジ財団は「技術的なオープン性」を挙げている。技術的にオープンなデータとは、大まかに言えばpdfや紙からデータを1つ1つ入力することなしにアプリケーションなどによって一括処理できるようなデータを指す。また、こうした一括での機械処理を可能にするためには、必要なデータを過不足なく手に入れる必要がある。

今回の東京公共交通オープンデータチャレンジでは、主にWebAPI(Webサービスをプログラミングから操作するための方法)を利用してデータが提供されている。

しかし、IT技術者からの声は厳しい。「APIで取れるデータに限りがあるし、取得したデータが何を指すのかわからない。そのため、ユーザーがわかる形に復号するだけでもチャレンジだ。ODPTの中で公共交通に関するデータについて正しい形を評価できる人がいないのではないか」などといった声が挙がっている。また、データそのものに対しても、品質(正確性)や公開スケジュールについて不安視する声があちこちから聞かれた。

遅れている日本のオープンデータ

そもそも、日本はオープンデータ化の取り組みで他国に大きな後れをとっている。アメリカでは2009年から政府などが保有する各種のデータを公開するサイト、Data.govなどでオープンデータ化が始まった。

交通業界では、たとえばニューヨークで地下鉄・バスを運行するMTAのWebページにはアプリケーションソフト開発者用のページがあり、データを無料でダウンロードすることができる(一部データの取得には登録の必要あり)。筆者も翻訳ソフトに頼りつつ、自力でニューヨーク地下鉄の時刻表をダウンロードすることができた。また、2012年のロンドンオリンピックではオリンピック専用の交通データ統合サイトが作られ、4000もの開発事業者が登録したという。

一方で、日本国内でのオープンデータ化の始まりは2012年の福井県鯖江市からで、欧米に比べると遅かった。本格化するのも2013年に「オープンデータ憲章」が同年イギリスで開催されたG8サミットで採択されて以降だ。

実は日本におけるオープンデータの萌芽は2001年にあった。国土交通省が「公共交通情報データ標準」を策定し、利用者本位の公共交通データの整備とオープン化を行おうとしたのだ。しかし、当時はデータ時代の到来を予測できなかったことがあって普及しなかった。

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