「運賃高すぎ」北総線、印西市長が値下げ要求 京成より7倍高い線路使用料が問題に

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スカイライナーなど京成の電車が北総鉄道の線路を使用して走っているので、北総鉄道は京成に対しては線路使用料を徴収する立場にあるが、この金額と、北総鉄道が千葉ニュータウン鉄道に払う金額のバランスが取れていないこともここで指摘されている。関連する契約が京成電鉄に有利になるように作られ、それが北総鉄道の運賃高の原因ともなっているとする見方もできる。

板倉市長は要求書を北総鉄道に加え、京成、千葉ニュータウン鉄道に対しても出している。各社の回答はこれからだが、北総鉄道企画室は「線路使用料の条件は、国の審査を受けて適正に認可されたと認識している」と説明している(毎日新聞2018年2月24日付千葉版)。

高まる市民の不満

1月21日に開催されたシンポジウムには印西市長も参加。会場は超満員(筆者撮影)

今年の1月21日には印西市内で住民団体主催の「北総線運賃を考えるシンポジウム」が開催された。60名ほどの定員の会場に3倍近くの市民がかけつけ、立ち見や会場の外で聞き入る市民までおり、盛況であった。板倉市長も出席しており、市民の北総鉄道高額運賃問題への関心の高まりを実感したのだろう。北総鉄道の高額運賃問題に対して利用者の法的異議に加え、板倉市長が、「市民の代表として、また、株主として、この状況を看過することができない」と表明したことはこの問題が新たな局面を迎えたことを意味する。他の沿線自治体が静観するなか、その動きに注目が集まっている。

今回問題となっている線路使用料等の鉄道会社の民間契約について国土交通省はあまり関与してこなかったし、利用者は異議を申し立てようとしても蚊帳の外であった。たとえば、トヨタ自動車や日産自動車といった自動車メーカーが部品メーカーからいくらで部品を調達しようがそれは勝手だ。しかし、鉄道会社の場合は自然独占等を理由として公共料金規制を受けている。従って、運賃は「能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたもの」でなければならない。それに影響する鉄道会社の契約(B to B契約)は客観的に見て合理的なものであることが求められることは明らかだ。千葉ニュータウン鉄道と北総鉄道および京成との線路使用料の違いについて誰もが納得のいく説明が必要だし、それができないのであれば是正する必要がある。それを怠れば、利用者、株主の批判はさらに大きくなるだろう。また、株主代表訴訟という新たな訴訟を抱え込む可能性もある。

細川 幸一 日本女子大学教授

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ほそかわ こういち / Koichi Hosokawa

専門は消費者政策、企業の社会的責任(CSR)。一橋大学博士(法学)。内閣府消費者委員会委員、埼玉県消費生活審議会会長代行、東京都消費生活対策審議会委員等を歴任。著書に『新版 大学生が知っておきたい 消費生活と法律』、『第2版 大学生が知っておきたい生活のなかの法律』(いずれも慶應義塾大学出版会)等がある。2021年に消費者保護活動の功績により内閣総理大臣表彰。歌舞伎を中心に観劇歴40年。自ら長唄三味線、沖縄三線をたしなむ。

 

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