買い取り「バイク王」、2期連続赤字の深刻理由 CMで集客、買い取り専業モデルの曲がり角

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こうした買い取り専業事業はIDOM(いどむ、旧ガリバーインターナショナル)が「ガリバー」ブランドで展開する中古(4輪)車買い取り事業の2輪車版と考えるとわかりやすいだろう。中古車販売につきものの、在庫リスクを抱えずに済むため、広告費さえコントロールできれば"持たざる”経営を貫くことができる。

このビジネスモデルが曲がり角を迎えている。

1つは競合の台頭だ。価格比較サイトにアクセスすると、ユーザーに「バイク王より高く買い取ります」というメッセージが届くことで、バイク王の買い取り台数の減少を招いている。

もう1つは広告の届き方にある。ネットの場合はある程度、広告を届けるユーザーを選べるが、テレビの場合はユーザーの属性にかかわらず広告が伝わってしまう。その結果、バイク王に来る買い取り依頼は、50CCなど圧倒的に流通台数が多い低排気量車になってしまう。

低排気量車の買い取りのデメリットは、低価格ゆえに利幅が薄いということだけではない。長く放置されていたことで、動かなくなった不動車などは、買い取り価格がゼロまたは少額なため、廃車費用を払えばユーザーが損をするような状況も生じてしまう。

同社にとっても時間ばかり費やし、利益にならず、クレームの可能性も高い不動車の増加は現場に混乱をもたらす。事実、こうした状況が価格比較サイトの台頭とともに営業赤字の大きな要因となった。

再成長のカギは小売りの強化

そこでバイク王は不動車対策として、低排気量車のユーザーには、最初から買い取り価格が廃車費用より小さくなるリスクを電話で説明し、それでも希望するユーザーにだけ出張査定するよう取り扱いを改めた。浮いた時間で高排気量ユーザーへのサービス改善を進め、買い取りを増やし、損益を改善する狙いだ。

さらに業容を拡大するために、2016年11月期からキャッチフレーズも転換。これまで買い取りを前面に打ち出した「バイクを売るならバイク王」というフレーズから、小売りなどバイクライフ全般をサポートする「バイクのことならバイク王」と、テレビCMなどのうたい文句も変更している。

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