財政赤字解消を放棄したトランプ政権の意図 ついに瓶の中から「魔人」が飛び出した
その発言は、ドナルド・トランプ政権の2019会計年度予算教書を擁護する中で、マルバニー行政管理予算局(OMB)局長から飛び出した。
「私はもう、ミック・マルバニー下院議員ではない」――。トランプ政権で予算編成を指揮するマルバニー局長によるこの発言は、過激に小さな政府の実現を主張し、かつて米国で旋風を巻き起こしたティーパーティ(茶会)運動の死亡宣告と言える。
財政赤字解消が取り下げられたことの意味
今回の予算教書では、「財政赤字の解消」という共和党の金科玉条が放棄された。トランプ政権の提案では、10年後の2028年度まで財政赤字が続く。昨年度の予算教書では2027年度で財政黒字にこぎ着ける道筋を描いたトランプ政権だが、もはや財政赤字の解消は目標ではなくなった。
マルバニー局長には、前職の下院議員時代にティーパーティ運動の先頭に立っていた経歴がある。2011年に米国が債務上限の引き上げに手間取った際には、同志であるティーパーティ系の議員とともに、歳出の大幅削減によって財政赤字を解消する法案を提案したこともある。だからこそマルバニー局長は、「今回の予算教書を支持できるのか」とメディアから責め立てられた。そこで出たのが、冒頭の発言だった。
もちろん、米国の予算教書は、時の政権による政治的なメッセージにすぎない。実際の予算は議会が主導して作成するため、予算教書がそのまま実行される可能性は限りなくゼロに近い。
しかし、メッセージにすぎないからこそ、財政赤字解消が取り下げられたことの意味は大きい。実行される可能性が低いのであれば、主義主張にこだわる選択肢もあったはずだからである。
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