女性の「働き方」に必要な健康問題への配慮 生理の痛み、実は病気かもしれません

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「ワクチンで感染は防げる。接種が先行している海外では、ワクチンで前がん病変が大きく減ることがわかっている」と日本産科婦人科学会の藤井知行理事長は説明する。

検診との併用も重要だが、検診はあくまで早期発見のために行うもので、予防という観点からは十分ではない。そうはいってもワクチン定期接種の推奨年齢は12~16歳。遅くとも25歳くらいまでには打っておくほうがいい。多くの働く女性にとって次善の策は、きちんと検診を受けておくことだろう。

ただ、若い女性にとって産婦人科受診の心理的ハードルは高い。妊娠して初めて産婦人科を訪れるくらいで、子宮頸がんの検診でさえ受診率は40%程度と低く、20~30代はもっと低い。

健康診断に婦人科系の問診項目がない

そこで甲賀准教授は、産婦人科の「かかりつけ医」を持って定期的に検査を受けることを提案している。

まず25歳になったら何もなくても一度行ってみる。次に子宮内膜症を発症しやすい年齢、30歳、35歳。40歳は子宮筋腫を発症しやすい年齢だ。定期的に検査することで時系列での変化を追え、いつ発症したかわからない状態を防ぎ、大ごとにならないうちに対処しやすくなる。「もしその年齢で行きそびれても、ブライダル検診など、何かきっかけを作って来てほしい」(甲賀准教授)。

最近では産婦人科という名称を変えてハードルを下げようという努力も始まっている。東大医学部附属病院や日本医科大学付属病院などでは近年、女性診療科・産科と名称が変更されているし、開業医ではレディスクリニックという名称も一般的になっている。不安があるなら、日本子宮内膜症啓発会議のウェブサイトのセルフチェックをやってみる。1つでも引っ掛かったら迷わず診察を受けるべきだ。

甲賀准教授は「女性の勤労者が増えているにもかかわらず、労働安全衛生法に基づく健康診断に、婦人科系の問診項目が1つもない。問診があること自体が啓発になり、不調なら病院に行ってみようという動機づけにもなる」と指摘する。

「多くの産業医は、生活習慣病や精神疾患などには関心を持っているが、婦人科の病気には理解が少ないのではないか。今の時代、女性の健康への無関心は労働力の損失につながる。重症化しないうちに治療できれば医療経済的にもプラスとなるはず」(同)。そろそろ、行政や企業も意識を変えるべき時期に来ている。

小長 洋子 東洋経済 記者

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こなが ようこ / Yoko Konaga

バイオベンチャー・製薬担当。再生医療、受動喫煙問題にも関心。「バイオベンチャー列伝」シリーズ(週刊東洋経済eビジネス新書No.112、139、171、212)執筆。

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