海運市況が急上昇 中国需要は本物か 光が差した鉄鉱石船市況だが、持続性に疑問符も

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足元の市況上昇はどこまで続くのか──。主に中国向けの鉄鉱石を運ぶ大型バラ積み船(ケープ船)の用船料(船の賃貸料)が、このところ急騰している。

4月ごろは1日当たり4000ドル台と低水準だったスポット契約の用船料だが、9月初旬には1年8カ月ぶりに2万ドル台を回復。9月26日現在、3年ぶりとなる4万2000ドル強まで急上昇している(トランプデータサービス調べ)。日本郵船、商船三井、川崎汽船の邦船大手3社は7~9月のケープ船の用船料を1万~1万1000ドルと見ていたが、予想を大きく上回って推移している。

ケープ船の運航コストは1日当たり2万ドル程度。前期末にバラ積み船130隻を減損処理した商船三井の場合、ケープ船の1日当たりのコストは1万5000ドル程度まで下がっているもよう。採算の改善は顕著で、10月にも今期の業績見通しを上方修正する会社が出てきそうだ。

全世界での鉄鉱石の荷動きの6割超を占める中国向けは、海運市況に大きな影響を及ぼす。成長鈍化が懸念されている中国経済だが、足元の鉄鉱石需要は意外にも底堅い。

「昨年は7億トン台前半だった中国の鉄鉱石輸入量だが、今年は8億トンに近づく可能性が高い」と、川崎汽船の浅野敦男執行役員は期待を寄せる。輸入量が増加する一方、鉄鉱石の港湾在庫はピークだった半年前に比べ3割減った(日本郵船調べ)。

中国の旺盛な鉄鉱石需要を受け、2大供給国の一つである豪州からの出荷は年初から極めて好調だ。資源メジャーのBHPビリトンやリオ・ティントは積極的に増産をかけている。新興資源会社のフォーテスキュー・メタルズ・グループも、今年は昨年の倍となる年間1億2000万トンペースで生産している。

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