日本でベトナム・ネパール人が急増した事情 存在感増す外国人だが偽装留学生問題なども

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中国人の在留資格で増加が目立つのは永住者と技術・人文知識・国際業務(技術者や通訳者、デザイナーなどが該当)だ。永住者は在留期間が無制限に認められており、一般にイメージされる「移民」に近い。ただ日本政府は「移民政策はとらない」という立場なので、移民の定義をしていない。

ベトナム人留学生と同様、ネパール人留学生も近年急増した(福岡市の日本語学校、写真:『週刊東洋経済』編集部撮影)

ネパール人は留学、家族滞在、技能での増加が目立つ。留学はベトナム人同様、背景にあるのは日本政府が2008年に策定した「外国人留学生30万人計画」。同計画が日本への留学ブームをアジア新興国で巻き起こした。

家族滞在と技能の増加は連動していると思われる。つまり、技能ビザで日本にいるのはインド料理店などでコックとして働くネパール人で、彼らの配偶者が家族滞在ビザで来日しているわけだ。ネパール人従業員を多く雇用する飲食店オーナーによると、「コックとして数年勤めた後に独立して自分の店を構える人たちがこの7、8年で一気に増えた。彼らが同郷の人を呼び寄せているようだ。永住権申請を目指すネパール人も多い」という。

「偽装留学生」も多い

日本で存在感の増す外国人だが、「多様化・共生が進んでいる」と手放しでは喜べない。

『週刊東洋経済』が本特集の「住民の4人に1人が外国人技能実習生 長野県川上村の反省」「急増する在日ベトナム人の苦境 制度化された搾取の構造」で詳細をリポートしたように、技能実習生制度は開発途上地域の支援ではなく企業や地場産業が安価な労働力を確保するための手段に成り代わっている。

また、留学生の身分だが実際には就労目的で滞在する「偽装留学生」も多く、その状態はやはり不健全だ。偽装留学生を大量に生み出した責任は、留学生30万人計画の下で留学ビザの発給要件を緩和してきた日本にもある。

「労働力としては受け入れたい、でも定住は困る」という本音と建前の使い分けを日本は続けてきた。冒頭のコンビニで働くベトナム人留学生のマンさんとアンさんは、学校卒業後は日本での就職を希望している。彼女らの夢をむげにしないためにも、現実を直視した外国人の受け入れ政策が必要となっている。

週刊東洋経済2月3日号(1月29日発売号)の特集は「隠れ移民大国ニッポン」です。
緒方 欽一 東洋経済 記者

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おがた きんいち / Kinichi Ogata

「東洋経済ニュース編集部」の編集者兼記者。消費者金融業界の業界紙、『週刊エコノミスト』編集部を経て現職。「危ない金融商品」や「危うい投資」といったテーマを継続的に取材。好物はお好み焼きと丸ぼうろとなし。

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