中国人富裕層の子女が、日本で直面する現実 なぜ親たちはそこまで過剰に期待するのか

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富裕層の若者ならではの悩みがあるようです(写真 : tomwang / PIXTA)

「取材元は明かさないでくださいね。もし彼らの目に留まったら、私がバラしたんだとうわさされて、保護者から苦情が来てしまうかもしれないので……」

ある予備校の職員は小さな声でこう語り出す。予備校といっても普通の予備校ではない。中国人留学生専門の予備校だ。私は昨年10月、「大久保で増殖!中国人向け「予備校」の衝撃」という記事で、東京都内には日本の有名大学への進学を目指す中国人の若者たちが、少なくとも5000人以上はいるという話を書いた。

彼らの多くは、日本語学校と予備校のダブルスクールにかかる年間150万円以上の学費に加え、マンション代や生活費など月間20万円以上の仕送りを、中国に住む親から送金してもらっている。つまり富裕層の若者たちだ。かつて中国人留学生といえば、アルバイトしながら苦学して日本の大学に進学するというイメージがあったが、現実は一変。何不自由ない生活をして、受験勉強だけをすればいいという恵まれた若者も少なくない。

現代中国を反映するような苦悩を抱えている

だが、取材を重ねてみると、そんな彼らでも現代中国を反映するような深い苦悩を抱えているという興味深い話を聞いた。その予備校職員は続ける。

「ひとつは中国に住む親からの強いプレッシャーです。親は現在40代から50代の働き盛り。大手企業に勤務したり、起業して財を成した人が多いです。彼らが若かった頃、中国人の出国制限は非常に厳しかったのと、経済的な理由もあって海外留学など夢のまた夢でしたが、そんな自分の夢を子どもに託そうということで、親の勧めで留学する子どもがけっこういます」

親の世代は留学しにくかったことや、留学生はホームシックにかかりやすいといった点は、日本人も含め留学生なら世界共通に起こりうることで、珍しいことではない。だが、中国人の留学には中国特有の事情がある。2000年代以降、あまりに急激に経済発展を遂げたため、一代で急にリッチになった中年が多く、その子どもは日本人が想像する以上に過度な期待を背負わされ、濃い親子関係に悩まされているというのだ。

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