外資製薬会社「超簡単テレワーク」の仕掛け 理由や場所は不問、5分単位で申請できる

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同社でのユニークなテレワークとはどのようなものだろうか。テレワークの一般的な形態として、「自宅」「出先」「サテライトオフィス」などがあると前述したが、同社でのテレワークのもっとも大きな特徴が、テレワークの理由や仕事をする場所は問わず、5時から22時まで、5分単位で申請できることだ。

ただ、当然のことながら、酒席やジムなどは除かれる。逆に言えばそれ以外の場所は許されるということなので、非常に自由度の高い制度だということがわかる。カフェなどでも仕事ができ、日中にプライベート時間を取り、美術館やジムに行くのもOKだ。

「テレワークを申請する頻度も、理由も極力問いません。介護や子育てなど事情がある社員を対象とする考え方もあります。しかし、それを言うなら誰でも何らかの事情、働くうえでの制限があると言えます。私たちは『誰もが制限社員』という前提に立って考えました」(BIJI人事本部の髙野美幸氏)

運用上では、上司、部下間やチーム内で、テレワークを取得する時間(何時から何時)、場所(自宅など)を前日までにメールなどで通知し、合意をとることが条件となっている。また、取得の上限は月間総労働時間の50%を目安にすることとなっている。

活用例は?

実際どのように活用しているのか、社員の実例を聞いてみた。

「私は毎週金曜日をテレワークにすると決めて、周囲にも伝えています。5分単位で申請できるので、ちょっと仕事を中断して子どもを迎えに行きます。8時から仕事を始めれば、決められた時間数で言えば4時ぐらいには仕事は終わりますから、子どもと公園で遊んだりもできます」(NBI医薬開発本部臨床開発企画部の片伯部<かたかべ>哲也氏)

2017年10月、時差Biz推進賞授賞式。小池百合子都知事から記念プレートを受け取る、BIJI取締役人事本部長相原修氏(写真:BIJI)

「決められた時間数」というのは、総労働時間のこと。もともと完全フレックス制をとっている同社では、総労働時間が月単位で1日の労働時間7時間50分×その月の要出勤日数と決められており、それ以上は「残業」となる。残業もゼロが望ましいとされ、残業が常態的になると問題になるそうだ。

片伯部氏は仕事としては、医薬品の安全性や有効性の検証を行う部門のプロジェクトマネージャーを務めている。パソコンと電話さえあればできる仕事であり、今は会社の固定電話は撤収され、パソコンを介した電話か各自の携帯電話で仕事をしているというから、オフィスに貼り付いている必要はない。部署の人数は20数人で、一般的に週1回以上の頻度でテレワークを取っている人が多いそうだ。つまり、毎日2~3人はオフィスにはいない状態。

「仕事の上ではまったく問題ありません。体感としては、土日が長くなったようなものなので、平日がラクになりました。また、体調が悪いけど働けないほどではない、というときなども活用します。無理に移動して体調を悪化させることもなく、人にうつす心配もないので合理的です」(片伯部氏)

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