北朝鮮で南北合宿をやると経済制裁に抵触? 「現金供与」につながるリスクがある

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観光は、国連安全保障理事会の制裁が未だに及ばない数少ない外貨獲得手段の1つだ。

もし韓国側がリゾート施設の使用料金を支払ったり、高価なスキーのトレーニング機材を新たに提供したりすれば、国連制裁がらみで問題が発生する恐れがあると専門家は指摘する。

韓国統一省は、スキー場への選手派遣について、まだ決定していないとしている。

「北朝鮮選手団に経済的支援を提供することで、制裁効果を薄めてしまうとの見方があることは承知している」と、同省広報官は19日の記者会見で述べた。「(北朝鮮に対し)制裁と圧力を与える国際協力を継続する立場に変わりはない。国際社会や国連の専門家委員会と協議して、問題がないようにする」

北朝鮮に対する制裁履行を監視する国連専門家委員会は、昨年の報告書で、オーストリア企業製ケーブルカーが、馬息嶺スキー場で使用されていたことを受け、規制対象にリフト設備を追加したと述べている。

ソウルにある峨山政策研究所のジェームス・キム研究員は、制裁決議に抵触する懸念を払拭するには、韓国政府は「極めて良く練られた計画」が必要だと話す。

「文政権の目標は、緊張を緩和し、北朝鮮の核問題の平和的解決に向けた発射台として冬季五輪を利用することだ。だがその実現に向けた韓国政府のやり方について、検討するべきだという批判は正しいと思う」と、キム氏は話した。

雪かき作業などに子どもを動員

スキー場を訪れた在平壌英国大使館職員は昨年、スキー場の美観を保つための雪かき作業などに子どもが動員されていたと話し、「非常に懸念を覚える」と述べていた。

「北朝鮮における大小のインフラ事業に対して、常習的に強制労働が行われていることは良く知られている。学生に課される義務的労働も含まれており、子どもも働かされている」。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチでアジアを担当するフィル・ロバートソン氏はそう語る。「馬息嶺スキー場が例外だと考える理由はない」

韓国と北朝鮮は、北朝鮮の金剛山で行われる文化イベントのほか、両国でのコンサート、韓国でのテコンドー実演など数々の五輪関連の合同プログラムを計画しており、五輪自体が目立たなくなってしまうリスクもあると、前出のKim氏は言う。

「五輪自体は、非政治的なスポーツイベントだ。だが周辺のイベントが大きくなり過ぎると、純粋な五輪の存在意義が政治化され、汚されてしまう恐れがある」とKim氏。「いったん一歩引いて、肩の力を抜いた方がいい」

(Hyonhee Shin 翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

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