激化する「米中海戦」、日本はどう処すべきか 米中が繰り広げる「温かい戦争」の実態とは?
中国―アメリカ間でこの15年に起きた海上事件の数々
中国は領土の防衛、台湾の独立阻止、独自の領有権主張の強化といった目標に加え、天然資源などの海洋権益獲得、海上交通路の確保などを目標に、東シナ海、南シナ海、そしてインド洋やさらにその先まで海洋進出している。本書で描かれるのは、そうした進出を続ける中国と、アジア太平洋地域という、海を主体とする広大な地域でプレゼンスを維持するアメリカとの間で実際に起きた、この15年ほどの非常に緊迫した海上事件の数々である。
本書のタイトルは『米中海戦はもう始まっている』だが、序章ではっきりと述べられているように、これは「温かい戦争」という新しい「戦争」の形を指している。かつてアメリカとソ連の間で繰り広げられた「冷たい戦争」では、アメリカはソ連を封じ込め、孤立させることによって崩壊に導くことを戦略としていたが、今の中国に対してそのような戦略をとることはできない。
それは、中国が世界第2位の経済大国となり、アジア太平洋地域の経済が中国をハブとしているからというだけではない。グローバリゼーションは国際社会をボーダーレスな「地球社会」に変化させつつある。その「地球社会」におけるグローバリゼーションの負の側面(たとえば国際テロ、海賊などの非伝統的な課題)に対応するうえで、中国はアメリカにとっても重要なパートナーになっているのである。たとえば、アフリカのソマリア沖アデン湾においては、中国も日米をはじめとする多くの国々の海上部隊とともに、海賊対策の任務に当たっている。
その一方で、中国は国際社会の確立されたルールを無視して、海洋進出をエスカレートさせている。本書は、海上における米中衝突の事例を具体的に描くことで、そうした「温かい戦争」の実像を示してくれる、優れたドキュメントだ。
2017年10月に開催された中国の第19回共産党大会の政治報告において、習近平総書記は、「南シナ海における島嶼の建設」や「海上の諸利益の擁護」を過去5年間の成果として挙げ、また中国軍を「今世紀中葉までに世界一流の軍隊にするよう努める」とした。
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