地獄を見た私が生活保護状態から脱せた理由 実家で親に頼るとかえって追い込まれる

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――小林さんがうつ病でデイケアに通っていたクリニックは、当初は就職支援をしてくれるという話だったんですよね?

小林:はい。それなのに全く就職の話は出ず、いよいよおカネがなくなってどうしようもなくなったとき「じゃあ生活保護を受けましょう」となったんです。私が通っていたクリニックは利益重視のところでした。たぶん、クリニック側はたくさん患者が来ると儲かるので、就職支援をしたくなかったのかもしれません。

雨宮:本人の負担なしでクリニックには国からおカネが入りますからね。貧困ビジネスですよね。でもそういう問題って、生活保護を受けることを前提に話しているわけじゃないですか。若い子にも「20歳になったら生活保護を受けられるから、それまで頑張れ」と。あらゆる可能性をその人から奪っていますよね。出口がなくなってしまう。

「クリニック側も生活保護を切るために頑張っていきましょうという方向には導いてくれなかった」(小林さん)(撮影:尾形文繁)

小林:そうなんです。クリニック側も生活保護を切るために頑張っていきましょうという方向には導いてくれなかったです。クリニックを替えたかったのですが、生活保護の人は決められた地域のクリニックしか行ってはいけないと当時は思っていました。のちに、指定外のクリニックに通ってもいいと知りましたが。

雨宮:昔、とある病院がホームレスの人を連れてきて生活保護を受けさせ、保険点数の高い必要のない手術をして、病院が何億も儲けているという事件がありましたが、それに似ていますね。

――小林さんが生活保護を受けられていたのは今から7~8年前とのことですが、当時と現在とでは、生活保護の受け方や切り方などの現状は変わっているのでしょうか?

雨宮:そんなに変わっていないと思います。10年前の年末に年越し派遣村があったわけですが、それ以来、少しは受けやすくなった部分はあるとは思います。それまではホームレスだと受けられないとか、間違った運用がありました。今も水際で生活保護を受けさせないようにする水際作戦の話は聞きますが、小林さんのように、クリニックがついているケースなどは、受けやすいというのはあると思います。

その先どうやって生きていくかのモデルとなった

――地域によって生活保護の受け方や切り方の違いはあるのでしょうか。

小林:私は自分の地域以外のことはよくわからないですけど、どうなんでしょう。

雨宮:基本はどこも同じだと思います。でも、精神障害のあるなしで就労指導などは違ったりすると思います。

やはり「精神障害の人にはあまり就労指導を厳しくしない」といった雰囲気はあると思います。私の周りでも精神的な障害を抱えながら生活保護を受けていたけど、今は普通に働いている人もたくさんいます。

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